データからみえる今日の世相~バレンタインデーのプレゼント
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データからみえる今日の世相~バレンタインデーのプレゼント

調査情報デジタル
【バレンタインデーにも時代による移り変わりはある。みなさんはバレンタインデーとどう付き合ってきましたか?】

江利川 滋(TBS総合マーケティングラボ)

 2月になりましたが、相変わらずコロナ禍が続いています。モヤモヤする毎日に季節の行事でアクセントを付け加えようとする人も多いのでは。

 2月の行事といえば「節分・豆まき」「恵方巻き」などもありますが、今回のテーマは「バレンタインデーのプレゼント」。

 日本では「女性が意中の男性に愛情の告白としてチョコレートを贈る日」として始まりましたが、時代とともに形や意味合いが変化している模様。

 その様子をTBS総合嗜好調査データで追いかけてみます。


バレンタインデー、41年の軌跡を追う!

 TBSテレビ実施のTBS総合嗜好調査では、1980年から「あなたまたはお宅でかかさずなさる行事」を毎年質問しています。

 季節ごとの様々な年中行事などの選択肢(当初は20個、現在は40個)から、当てはまるものをいくつでも選んでもらうものです。

 このデータで、前回は新年の行事について分析しましたが、今回は「バレンタインデーのプレゼント」に注目してみました。

 次の図は、欠かさず行う行事として「バレンタインデーのプレゼント」を選んだ人の割合について、その推移を男女別に示したものです。データは東京地区の80年から最新(2021年)までで、実に41年分に及びます。

バレンタインデーのプレゼントをする人の割合

 まずパッと目に付くのは、男性より女性でバレンタインデーのプレゼントを贈る人の割合(行為率)がかなり高いことです。ざっくり言って女性が4割前後なのに対し、男性は2割前後といったところ。

 バレンタインデーのプレゼントは「女性が男性に贈るのが一般的」と思えば何の不思議もないかも知れません。

 しかし、女性が多いのはそうだとして、2割前後の男性はどういう事情でこうした回答をしているのでしょうか。

 詳しい理由は尋ねていないので、男性からプレゼントを贈る「逆プレゼント」の可能性も否定できませんが、「毎年もらっている」ので「欠かさずにする行事」と答えているのかも知れません。

 バレンタインデーの贈り物といえばチョコレートですが、「本命チョコ」「義理チョコ」など意味合いも様々。女性がどういうつもりで贈り、男性はどういうつもりでもらうのか、その辺りも気になります。

 データ全体の動きでは、80年代に男女とも行為率が伸びていき、バブル崩壊が始まる91年をピークに踊り場状態に。

 その後、女性で00年代後半と10年代前半にそれぞれ盛り上がりがあり、15年以降は下降傾向といった流れになっています。

 そこで女性の行為率について、詳しくデータをみてみます。次の図では、女性の行為率について、年代で分けて推移をまとめてみました。

女性の年代別に見たバレンタインデーのプレゼントをする人の割合+

 図を見ると、10代や20~30代といった若年女性での行為率が高く、年代が上がるごとに行為率が下がる傾向がうかがえます。

 10代の思春期は、告白するとかしないとか恋愛への興味も高い頃。20~30代は、結婚するとかしないとかパートナー探しも大事になる頃。それに、社会人として勤め始めると、職場で義理チョコ配りが始まってみたり。

 一方、40~50代では若年層ほどバレンタインデーにコミットする必要もなくなり、60代以上(注)はそういうことが好きな人が行っているとか?

 ステレオタイプ的な見方ですが、そんなこんなで若年層の行為率が高いのかも知れません。

当時の新聞記事からみえてくること

 そうした10代、そして20~30代の数字の動きを時代とともに追いつつ、その背景を当時の新聞記事から探ってみたいと思います。

 まず、行為率が2割程度だった80年代初頭。

 83年のバレンタインデー向けチョコレート商戦について、大手菓子メーカーが「小中学生向けの低額商品を中心に展開」との記事です(82年12月22日、日経産業新聞)。理由は「女の子が男の子へ“あいさつ”がわりに気軽にプレゼントするという“義理チョコ”が最大の売れ筋とみた」ためとか。

 義理チョコの低年齢化が種まきに成功したか、80年代を通じて行為率が増加し、90年には5割前後に。

 バブル全盛の当時、若者にもそれなりに購買力がありました。

 『最近のプレゼント 心より行動“贈り好き世代”』という記事(89年2月3日、朝日新聞)では、バイト代で彼女に数万円のプレゼントを贈り続ける大学1年の「みつぐ君」が、「バレンタインデーには彼女からプレゼントがもらえそうだが、『ホワイトデーは、10倍返しで、根性みせなければ』」と語っています。

 コロナ禍で大学生のバイトが激減し学費が払えない、といった話を聞く現在からすると、かなり隔世の感があると言わざるを得ません。

 バブルが弾けた90年代。若年女性の行為率は4割程度で横ばいですが、義理チョコを問題視する記事が出てきました。

 『義理チョコやめて今年のバレンタインデーは休んじゃう』(94年2月3日、日経流通新聞)によれば、OLが配る義理チョコに男性陣が言いたい放題文句を言うとか。「尽くしたわりには報われず、かといって義理チョコ配布を拒否する勇気もない」と、OLのやるせない思いが記されています。

 00年代に入ると10代女性の行為率に変化が。00年代後半から10年代前半にかけて、毎年乱高下しながらも6割前後で推移しています。

 これに関係しそうなのが「友チョコ」の登場です。

 その解説記事(03年1月16日、日経流通新聞)では、「数年前から女子中高生の間で、チョコを親しい友達同士で交換しあう習慣が一般化」していて、「バレンタインデーが友情確認の場にもなりつつある点や、多くの女性が一緒にイベントを楽しめる点」などが背景にあると考察しています。

 「女性が贈って男性がもらう」というあり方に変化がうかがえる中、15年には『ご褒美チョコに注目 バレンタイン商戦 “義理”需要減 自分用が人気』(15年2月1日、読売新聞)との記事が。「自分への『ご褒美』や家族、友人用に」チョコを買う人が多いとあり、“贈って意味のある人に贈る”ようになっていったということかも知れません。

 この記事が出た15年は「14日が土曜日のため、職場で配る『義理チョコ』の需要が減」ったとあり、義理チョコ需要には曜日も関係しそうです。

 カレンダーを見ると、2月14日が土曜だったのは09年と15年、日曜だったのは10年と16年、そして昨年21年でした。

 若年女性の行為率を見ると、確かにこれらの年では下がっているようにも見えます。

 バレンタインチョコの行き先は、本命のほかに友だち・家族・自分などに向かい、義理チョコはせいぜい「会えば渡す(会わなければ渡さない)もの」になりつつあるのかも知れません。

 そして、昨年や今年はコロナ禍で会う機会も少なくなっています。

 世界では男性も(もちろん女性も)バレンタインデーにプレゼントを贈るそうです。日本も「女性が男性に義理チョコを贈る」という形から、「男女を問わず贈りたい人が贈りたい相手に親愛の情を込めて贈る」という、ある意味で真っ当な習慣になっていくのかも知れません。

注:60代は05年、70代は14年から調査対象に追加されたので、グラフが途中からになっています。
<執筆者略歴>
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。
視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は総合マーケティングラボに在籍。

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chousa@tbs-mri.co.jp


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