データからみえる今日の世相~「夫婦別姓」は今どれだけ支持されているのか
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データからみえる今日の世相~「夫婦別姓」は今どれだけ支持されているのか

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【「選択的夫婦別姓」への意見は2015年に逆転していた】

江利川 滋(TBS総合マーケティングラボ)

 前回はJNNデータバンク定例全国調査という調査データから、「主婦のあり方」についての意見の変化を紹介しました。
 「主婦も職業を持つべき」「主婦は家事に専念すべき」という2つの意見の支持率を約半世紀にわたるデータで追いかけたところ、若年層に「おや?」と思う動きがありました。
 ご興味ある方はぜひそちらもご覧ください。

 今回は主婦から家庭、結婚と連想して「夫婦別姓」を取り上げてみたいと思います。詳しく言うと「選択的夫婦別姓制度(注1)」です。

 今の日本では、婚姻届を出すときに夫か妻の姓のどちらかに統一して記入することが求められます。
 そのため婚姻届は出したいが二人とも姓は変えたくない夫婦の場合、婚姻届を出すために姓を統一するか、姓を変えないために婚姻届を出さない(いわゆる事実婚)か、究極の選択を迫られます。
 その他に、婚姻届を出しつつ、対外的には旧姓を使うという手もあります。ただ、そうした対応が必要になるのは姓を変えたほうだけなので、不公平だと感じる人もいると思います。

 そこで婚姻届を出すときに「姓を統一するか、しないかが選べる」ようにするというのが選択的夫婦別姓制度です。
 別姓を望む夫婦にはよさそうな制度で、折に触れて法制化の請願や法案提出なども行われています。しかし、「別姓だと家族の一体感が失われる」など否定的な意見もあり、夫婦同姓制度が維持されています。

 賛否のある夫婦別姓論議について、JNNデータバンク定例全国調査では90年代半ばから現在まで毎年、人々の意見を調べ続けています。
 この話、世間的には一体どう受け止められているのか、データで確かめてみると……?

自民党は好き、でもやっぱり夫婦別姓支持

 JNNデータバンク定例全国調査では、94年から夫婦別姓についての意見を調べ始めています。
 具体的には「自分にあてはまるもの」をいくつでも選ぶという質問の中に、対照的な2つの意見を選択肢として入れて、その選ばれ具合を見ています。形式的にはこれらを両方選ぶこともできますが、大抵はどちらか一方を選ぶことが多いようです。
 次に示す折れ線グラフは、そうした2つの意見の選択率について推移をまとめたものです。

1_夫婦別姓に対する意見

 まず、点線で示した94年~98年は以下の選択肢で、夫婦の姓のあり方についての意見(もっといえば「好み」)を尋ねる内容でした。
 【1994年~98年】
 「夫婦は同姓のほうがよい」
 「夫婦は別姓でかまわない」
 この頃は夫婦同姓派が過半数で、別姓容認派が2割強程度。

 しかし99年以降、選択的夫婦別姓制度を意識して選択肢を以下のように変更すると、数字の出方が変わってきます。
 【1999年~】
 「夫婦は同姓であるべきだ」
 「夫婦は同姓か別姓か選べるべきだ」
 夫婦の姓のあり方に「別姓という選択肢があるべきかどうか」を尋ねると、同姓支持が4割前後、選択支持が3割前後。
 自分の好みはともかく、社会的に選択の幅が広がるのは歓迎という立場が反映された結果といえるかもしれません。

 とはいえ、00年代は同姓支持のほうが多く、05年から10年にかけては同姓支持が増加・選択支持が減少する傾向もうかがえました。
 時期的にいうと、09年に民主・社民・国民新党の連立政権が誕生する前、小泉内閣以後の自公政権総理が毎年交替していた頃です(05年小泉→06年安倍→07年福田→08年麻生)。

 夫婦別姓には自民党内の保守派の反対が強いという話をよく聞きます。
 当時の報道でも、選択的夫婦別姓を可能にする民法改正案について「自民党内にも賛同する声はあるが『家族のきずなが失われる』などの反対論も根強く、党内論議が進む機運はない」とあります(06年5月18日、日本経済新聞夕刊)。
 そうした保守派を抱える自公政権の勢いが衰えた05年~10年に、世間では夫婦同姓支持が増え気味だったのは不思議な感じがします。

 その後、民主党政権が失速して12年末に政権交代。そこから現在まで自公連立内閣が続いていますが、年ごとに同姓支持が減り選択支持が増える傾向も続いていて、これも不思議な感じです。
 15年には賛否が逆転し、最新データ(21年11月実施)では同姓支持が2割、選択支持が5割になりました。

 戦後70年以上続く「夫婦同姓」を「別姓もあり」にするのは抵抗がある、と考えるのはどんな人か。まず思いつくのは、同姓制度にすっかり馴染んで生きてきた年配者ではないか、という仮説です。
 逆に、若年層ほど選択支持が多そうだ、という仮説もありそうです。
 そこで最新データで、男女・年代別に同姓支持と選択支持の割合をまとめてみました。

2_性・年代別+

 パッと見て、同姓制度で自分の姓を変えることが多い女性では、ほぼどの年代でも過半数が選択支持なのがわかります。その上で、若年層のほうが選択支持の割合が多い傾向が見て取れます。
 女性でも上の年代ほど同姓支持が多いのですが、その傾向は男性のほうがはっきり表れています。
 男性では年代によらず選択支持が4割程度で、若年層ほど選択支持という仮説は外れましたが、それでも全ての年代で同姓支持を上回っています。

 こうしてみてくると、選択支持が増加する世の流れの中で、同姓支持を堅持する岩盤勢力は「自民党の保守派」ではないか、と思えてきます。
 そこで最後に、自民党への好き嫌いの感情と夫婦別姓への意見との関係を調べてみました。
 JNNデータバンク定例全国調査では「好きな政党」と「嫌いな政党」をそれぞれ別の質問で尋ねています。それらの回答から、自民党が「好き」「嫌い」「どちらでもない」というタイプを作り(注2)、それぞれの同姓支持と選択支持の割合をまとめたのが次の帯グラフです。

3_自民党+

 同姓支持の割合が最も多いのは自民好きで、ここに同姓支持の人が固まっていると思わせる結果です。
 しかし自民好きでも選択支持が4割強で、同姓支持を上回っているところは注目に値します。

 筆者としては、選択的夫婦別姓制度は是非を問う段階から「いつ成立するのか」の段階に進んでいると考えますが、果たしてどうなることやら。

注1:民法等の法律では「姓」や「名字」のことを「氏」と呼んでいることから、法務省では「選択的夫婦別氏制度」と呼ぶそうです。
注2:「自民党が好き」は「好きな政党」で自民党を選び「嫌いな政党」で自民党を選ばなかった人で、「自民党が嫌い」はその逆です。どちらの質問でも自民党を選ばなかった人が「どちらでもない」になります。なお、どちらの質問でも自民党を選んだ複雑な心情の持ち主が38人(回答者全体の0.5%)いましたが、個別の集計からは省きました。
<執筆者略歴>
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。
視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は総合マーケティングラボに在籍。

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chousa@tbs-mri.co.jp


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