データからみえる今日の世相~『好きな食べ物』の移り変わり
【テレビ局の膨大なデータから見えてくるもの。日本人が好きな食べ物の人気の移り変わり、東西の違い】
江利川 滋(TBS総合マーケティングラボ)
時代の流れや世相を切り取るようなデータをご紹介するこの記事。前回は「TBS総合嗜好調査」の最新データ(2020年10月実施)で、好きな「ごはんもの・めん類・パンなど」のランキングを東西比較しました。東京・阪神でさぞかし違うかと思いきや、カレー、ラーメン、にぎりずしなど上位は結構一緒だったのですが、みんな昔から好かれていたのでしょうか?
【引き続き『データでみる「好きな食べ物」44年の軌跡』に続く】
データでみる「好きな食べ物」44年の軌跡
「好きなごはんもの・めん類・パンなど」時系列の東西比較(複数回答)
データ:TBS総合嗜好調査(各年10月実施、13~59歳男女、東京地区・阪神地区)
カレー、ラーメン、にぎりずしなんて、今や日本の国民食と言ってもいいような物。好きじゃない状態が考えられないくらいですが、昔からそうなのかというと、食べ物ごとに違った成り行きがあります。
「昔がどうだったなんて、どうしてわかるの?」と思うかも知れません。実はこの「好きなごはんものなど」を、TBS総合嗜好調査が1970年代からずっと調べているのです。
この調査、最初は東京地区だけで1975年に始まりました。その後、79年に阪神地区も追加され、今まで続いています。
「好きなごはんものなど」の調査項目が整ったのが77年で、そこから2020年の最新データまで44年分のデータを蓄積。時系列でずっと結果を追いかけられるようになっています。
そこで、2020年に上位ランクインした「好きなごはんものなど」の時系列データを東京・阪神それぞれで集計したところ、ここで示した折れ線グラフのようになりました。
これを見ると「にぎりずし」を好きだという人は昔から東西で6割前後いて、高い人気をずっとキープしてきたことがわかります。
これに対し「中華そば・ラーメン」「カレーライス」「スパゲティ・パスタ」は80年代から00年代に掛けて人気を伸ばしてきました。
東京ではラーメン人気が先行し、カレーとパスタが後から一緒に伸びています。一方、阪神ではラーメンとカレーの人気が延びて、パスタが追う展開でした。ちなみにそれぞれの料理で好きな人の割合が半数近くになったのは、東京のラーメンが90年代前半と最も早く、東京の残り2つ、そして阪神では3つとも00年代半ばまで掛かっています。
「日本そば」は、東京で80年代に3割だった愛好者がじわじわ増えて、00年代以降は4割前後で推移。阪神では3割弱でやや東高西低ながら大差なし。
これに対して東西ではっきり違うのが「お好み焼き・たこ焼き」。東京では4割弱の人気が、阪神では5~6割。ちなみにグラフが01年から始まるのは、そこから調査項目に加わったからです。
全体としては昔ながらのにぎりずしの人気に、ラーメン、カレー、パスタが追いついて、ここ15年位は四つ巴の争いといった感じでしょうか。
すしや日本そば、東西差はあれどお好み焼き・たこ焼きは割合人気が安定していますが、ラーメン、カレー、パスタはなぜ人気が上がってきたのでしょうか。次回はさらにデータ分析して、そこに切り込んでみたいと思います。
<執筆者略歴>
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は総合マーケティングラボに在籍。
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