データからみえる今日の世相~どんな時が「楽しい」ですか?
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データからみえる今日の世相~どんな時が「楽しい」ですか?

【「楽しい」と感じる時間は、性別、年齢によって異なる。そこにある関連性や傾向を専門的な分析でひも解く】

江利川 滋(TBS総合マーケティングラボ)

 前回この原稿を書いていたときは、3回目の新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が沖縄を除く9都道府県で期限を迎えましたが、その後7月12日に東京へ4回目の宣言が出されてしまいました。
 その期限は今のところ8月22日で、宣言期間中の7月23日~8月8日に東京オリンピック開催となりました。感染者拡大傾向の中、未だに中止すべきとの意見も少なくなく、手放しで没頭・熱狂できない気持ちもあります。
 あれも我慢、これも我慢でコロナ疲れも頂点ですが、前回はコロナ禍が過ぎたらやりたい鬱憤晴らしや趣味のことなども含めて、何をしているときが「楽しいと感じる時間」かを眺めました。今回は、老若男女で何が共通に楽しく、何が違うのかを、コレスポンデンス分析で一望してみます。

【引き続き「みんなの“楽しいと感じる時間”を見渡してみる」に続く】

 みんなの「楽しいと感じる時間」を見渡してみる

 前回に引き続き、この5月に実施したJNNデータバンク東京地区追加調査(注)のデータを分析します。質問項目は、51個の選択肢から「楽しいと感じる時間」をいくつでも選んでもらう複数回答でした。

 前回は回答者全体のベスト5を眺めた上で、20代女性、20代男性、60代女性、60代男性それぞれのベスト5を比較しました。
 全体の1位は「おいしいものを食べているとき」で、これは20代・60代合わせて女性でも1位、男性では2位にランクインしています。
 一方、20代では「自分の部屋で好きな音楽を聴いているとき」が上位(女性で2位、男性で4位)ですが、60代では「温泉でゆっくりくつろいでいるとき」が上位(女性で4位、男性で1位)と、年代による差も見られました。

 このように年代と性別ごとに集計してみると、それぞれで興味深い結果が得られます。しかし、調査対象者は下が13歳から上が74歳と幅広いため、年代を分けて一つ一つ検討していくのは結構大変です。
 もっと手軽に全体の状況を見て取る方法はないものでしょうか?

 そこでコレスポンデンス分析の出番です。対応分析とも呼ばれるこの手法は、前回から今回にかけて見てきたような個別の集計を、1枚の図にまとめて表現します。実際に何をしたのかを説明してみましょう。

 まず、性別と10歳刻みの年代(10代~70代の7区分)を組合せ、回答者を「男10代」~「女70代」の14カテゴリーに分け、それぞれのカテゴリーごとに51個の「楽しいと感じる時間」の選択率を集計しました。
 しかし、さすがに51個は多すぎるので、14カテゴリーのどれか1つでもベスト10入りした項目(同順位含む)に絞ったところ、以下のリストに示す24個が残ることになりました。

 本来、リストの右側には性年代の14カテゴリーが並んでいます。しかし紙幅に限りがあるので、ここでは男10代(男性13~19歳)と女70代(女性70~74歳)の結果を掲載しました。
 この2つのカテゴリーを比べてみると、回答者全体での選択率が高い「⑬おいしいものを食べているとき」は、やはり両者でよく選ばれていました。その一方、女70代の選択率が低い「⑩スポーツをしているとき」や、男10代が全く選ばなかった「㉔ガーデニング(土いじり)をしているとき」など、性年代の選択率に特徴のある項目も見受けられます。

コレスポンデンス分析に用いる「楽しいと感じる時間」リスト
※項目は複数選択、表の数値は選択率

楽しいと感じる時間リスト

 このリストは、性年代と「楽しいと感じる時間」を組み合わせて(クロスさせて)集計しており、こうしたリストを「クロス集計表」と呼びます。そして、性年代のようにクロス集計表の上に来る項目を「表頭(ひょうとう)項目」、「楽しいと感じる時間」のように表の横に来る項目を「表側(ひょうそく)項目」と呼びます。

 コレスポンデンス分析は、こうした表頭項目と表側項目の相関が最も大きくなるよう、それぞれに適切な重みを付ける(そうした重みを見つける)分析です。その重みを各項目の座標値と見てプロットした図を作り、その図を解釈するのが分析の目的になります。
 たいていの場合、最初に求まる重み(第1軸や次元1などと呼びます)に元のクロス表の情報が全て収まることはありません。そこで、第1軸で説明できない部分を表現する重み(第2軸、第3軸など)も計算します。
 また、その軸で元のクロス表の情報のどれくらいが説明できたかを示す割合を「寄与率」と呼びます。

 分析の説明が長くなりました。第1軸を横軸、第2軸を縦軸にしてプロットした今回の結果が以下の図です。2つの軸の寄与率が合わせて7割弱なので、元のクロス表の構造が概ねこの図で表現できているといっていいでしょう。

楽しいと感じる時間と性年代(コレスポンデンス分析)

楽しいと感じる時間と性年代

 ●が性年代、▲が「楽しいと感じる時間」項目ですが、この図を眺めるコツが2つあります。

 1つは、多くの性年代で選択率が高い項目が原点の付近に集まっている、ということです。
 回答者全体でのベスト3は「⑬おいしいものを食べているとき」「㉑温泉でゆっくりくつろいでいるとき」「⑳家族と食事をしているとき」ですが、これらはいずれも原点の近くにあります。

 もう1つは、原点から見たときに、同じ方向にあったり近い位置にあったりする項目同士は関連性が高い、ということです。
 そうした目で眺めると、男10代は「①ゲームをしているとき」、女70代は「㉔ガーデニング(土いじり)をしているとき」や「㉓子供や孫と遊んでいるとき」との関連性が高いことが見てとれます。

 プロット図全体では左から右に向かって年齢が上がり、上側が女性、下側が男性という構図です。
 イメージ的には、若年女性(図の左上)はカラオケやショッピングなどの「街遊び」、若年男性(左下)はゲーム、音楽、お笑い番組などの「メディアを通じた娯楽」を楽しんでいるようです。
 それが中年にさしかかると、旅行、ドライブ、リゾート、温泉など「外出レジャー」に代わり、さらに年を重ねると、静かな飲食やガーデニングといった穏やかな楽しみに親しむようです。

 テレビ局の人間としては、中高年の女性と「⑯テレビのドラマをみているとき」の親和性が高いというのが肌感覚に合致して、リアルな結果だと感じた次第です。

 この見取り図は、あなたの肌感覚には合っていますか?

注: JNNデータバンク定例全国調査・TBSテレビ担当分の調査対象者(=東京地区追加調査の対象者)は、東京駅起点30km圏(東京・千葉・埼玉・神奈川)在住の13~74歳男女です。今年5月の追加調査の回答者は927人でした。
<執筆者略歴>
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は総合マーケティングラボに在籍。

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