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3年ぶりの復活あれこれin山形

【大雨により甚大な被害がでた山形県。しかし厳しい状況の中でも「3年ぶり」の花火大会、花笠まつり、芋煮会フェスティバルが県民を勇気づける】

佐藤 浩(テレビユー山形・報道制作部長)

 「3年ぶりに開催」の文字が踊った今年の夏。山形県内でも様々なイベントが復活しました。過去2年間新型コロナで自粛していたイベントが、過去最大の感染状況となった第7波の中実施されることになるとは皮肉なものですが、それでも我々人類は、この2年間で新型コロナへの対応策をそれなりに身につけ、「withコロナ」時代へ一つ前進、Nスタやまがたでも様々な「3年ぶり」を伝えました。


最上川が氾濫し浸水した大江町左沢

町民の希望となった花火大会

 山形ではこの夏「史上初」の出来事が起きました。8月3日午後7時15分、県内で初めてとなる大雨特別警報が発表されました。置賜地方を中心に降り続いた大雨で、最上川をはじめとする河川が氾濫。建物被害が1600棟を超え、主要道路も崩壊、農作物を含め被害総額が474億円を超える(9月16日現在)甚大な被害となりました。

 最上川は2020年の7月豪雨でも氾濫していて、当時は「数十年に一度の災害」と言われましたが、わずか2年後に同じ事態となり、異常気象が異常ではなくなっている現実を突きつけました。

あてらざわ温泉湯元旅館の柏倉京子さん

 「まさかまた…」
 大江町左沢(あてらざわ)の最上川沿いで温泉旅館を営む柏倉京子さんは苦悩していました。2年前の氾濫でボイラーが壊れ、やっとの思いで旅館を再開させたものの、再び起きた氾濫。同じように旅館は浸水しボイラーもまた壊れてしまいました。「もう一回がんばるかな」気丈に話す柏倉さんですが、心労は相当なものです。

100回記念の水郷大江夏まつり灯ろう流し花火大会

 重いニュースに心沈む大江町の人たちの心の支えとなったのが、3年ぶりに有観客で開催された「水郷大江夏まつり灯ろう流し花火大会」でした。県内で最も歴史の古い花火大会で、今年は百周年の記念の年。大雨被害で中止も検討されましたが「希望の花火大会として何とか開催を」との町民の声を受け、8月16日に無事開催。4000発の花火が大江町の夜空を彩りました…

 その華やかな花火を柏倉さんは複雑な思いで見ていたといいます。花火大会の陰で、治水対策も進められていました。それは、川沿いに堤防を築くことです。町が示した案は、多くの家が立ち退かなければならない計画です。その中に、柏倉さんの旅館も含まれていました。「覚悟はしていました」と話す柏倉さん。「逆に(立ち退く)その日までがんばろう」柏倉さんにとって大きな決断を迫られた夏となりました。

3年ぶりに目抜き通りで開催

 山形での“3年ぶり”の一つ「花笠まつり」。一昨年は中止、去年は会場を変え規模縮小開催。今年は規模は縮小でしたが、いつもの目抜き通りで観客の前で踊ることができました。
  
 「ぽっかり穴が空いたような感じ」この2年間をこう表現した民俗文化サークル四方山会(よもやまかい)。花笠まつりで毎年トリを務めるグループです。「ヤッショ、マカショ」の掛け声こそ出せませんが、その分一糸乱れぬ踊りを目指しました。

 高校3年生のメンバーは「コロナ禍で高校3年間何もしないで終わってしまったので、最後こうやってお祭りで楽しくできてよかった。」青春の1ページにギリギリ滑り込めた今年の花笠まつりでした。

復活!日本一の芋煮会フェスティバル

 コロナ禍からの復活に大きな期待が寄せられたのが「日本一の芋煮会フェスティバル」。河川敷で巨大な鍋に重機を使って調理する映像を皆さん一度は見たことがあるのではないでしょうか。

 「芋煮を通じて笑顔を取り戻したい」
 実行委員長のこの思いは決して大げさではありません。山形の秋といえば“芋煮会”。コンビニの店頭に“薪”が並び、休日ともなれば河川敷のあちこちで芋煮の煙が立ち上ります。

 しかしコロナ禍でその光景も一変。秋の河川敷には人が少なくなり、芋煮会をやるにしても人の目を気にしながらという雰囲気に。秋の河川敷に本来の姿を取り戻すべく、今回の芋煮フェスには2年間の知恵が生かされました。

 芋煮にはフタが取り付けられたほか、密を避けるため芋煮を受け取れる時間を指定できるキャッシュレス決済も導入。大鍋は、直径6.5メートルのその名も「3代目鍋太郎」、そこに里芋3トン、牛肉1.2トン、こんにゃく3500枚、長ネギ3500本が投入され、3万食の芋煮が作られました。

 当日は天候にも恵まれ、約3万食の芋煮は開始から5時間で全て配られました。そして河川敷には芋煮を手にした大勢の人の笑顔の花が咲いていました。

 「こうやって河川敷が人で埋め尽くされる、そんな通常開催をめざしていたので本当にうれしい」

 無事成功したフェスティバルを実行委員長はこう振り返りました。

河川敷に戻った賑わい

 山形県内での新型コロナ第7波は8月中旬にピークとなり、9月20日現在減少傾向が続いています。

 山形県内でも思い悩む人、笑顔を見つけた人、笑顔を取り戻そうとした人様々です。コロナに振り回されている日本ですが「withコロナ」の生活も根付いてきました。これからも山形で暮らす人々の思いと笑顔を伝え続けていきます。

<執筆者略歴>
佐藤 浩(さとう・ひろし)
1972年生まれ 山形県河北町出身
1995年テレビユー山形入社 報道制作部に所属
ニュース記者、情報番組チーフディレクター、
東京支社編成報道担当、ニュース筆頭デスクなど
現在は報道制作部長 

【担当した主な番組】
「どよまん」ディレクター(2001年度~2006年度)
「荘内館ブルース~110年の歴史にサンキュー~」(2007年)
「子どもたちへ笑顔の贈り物」(2015年)
「Nスタやまがた」

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chousa@tbs-mri.co.jp


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