視聴者の声~様々なご意見を放送に活かすために
【コロナ禍での対応、SDGsへの取り組み、ジェンダー差別、今日もテレビ局には多くのご意見が寄せられる】
村田典子(TBSテレビ視聴者サービス部)
先月、このコラムで多様性について書いたが、視聴者センターに届くご意見も正に多様だ。誤字や言い回しの間違いのご指摘、番組内容やキャスティングへの批判や要望など、日々様々なご意見が届き、ひとつひとつに気づきがある。全ては私たち放送に携わる者への叱咤激励とも言えるかもしれない。視聴者の皆さんからの声に真摯に向き合うことで、番組や放送を少しでも良いものにして行かなければと改めて思う。そして「ご意見は世を映す鏡」。ご意見から世の中が見えてくると痛感する日々である。
11月後半、コロナの新規感染者数は以前に比べ大幅に減少したが、視聴者からは「ロケ先での出演者のマスク着用など、感染対策を今こそきちんとして欲しい。テレビはお手本を示して」というご意見が継続的に届く。「コロナワクチンの3回目接種の話が進んでいますが、本当にこのワクチンが安全なのか、どのくらいの人にワクチンによる重い副反応が出ていたのか?新種株には効果があるのか等、本当の事が知りたいのです」といった内容の声も届く。第6波は来るのか?今後の生活はどうなるのか?街には人が増えているが、人々の不安が解消された訳では無い。
「今のご時世に大食いをネタにするのはどうかと思います」「食べ方が汚い、口の中が見えるなんて、特に食事時は不快です」など、食に関するご意見もよく届く。「試食の時に出される量が多くないですか?残すのはもったいないので、量をもう少し考えてもらいたいです」。大量消費の時代は終わり、今、人々が目指すのは持続可能な世界。弊社はSDGsウィークと題してキャンペーンもお送りしているが、視聴者も世界の動きに敏感だ。
敏感といえば、「不快に思います」とか「チャンネルを替えました」という視聴者の言葉に私たちは敏感になる。
誰でも、人と話したり、何かを見たり聞いたりした時に、違和感をいだいたことや居心地の悪さを感じたことが一度や二度はあるだろう。もし、特定の人に何度もそんな感覚をいだいたとしたら、たいていはその人を避けてしまう。視聴者が番組に対して、或いはその番組の出演者に何度もそんな違和感を感じたのなら、見なくなるのは当然で、そんな番組を流す局とも疎遠になってしまうだろう。だから「不快に思います」とか「違和感がありました」という声は気にするべきだと思っている。
最近、皆が不快になることが多い事の一つに差別やジェンダーに関することがある。特にアンコンシャスバイアスがかかった発言や演出に対しては数年前とは違って必ずご意見が届く。一家の世帯年収を説明する際にそれを「夫の収入」と決めつけて説明してしまった際や、「子どもが入院する時に付き添うのは母親」と決めつけるような発言が出た際にも勿論ご指摘があった。きっと普段の生活の中でも違和感をいだいていたのだろう。それが近年テレビ局にご意見として数多く届くようになったのだ。出演者に対しても、男性MCが女性出演者に対して発した言葉や、VTRに対する何気ないコメントから「あ、この人こういう考え方をするんだ」「女性を馬鹿にしているわよね」など、視聴者に判断されることが少なくない。こういった出演者についての落胆や違和感は、かつてママ友ランチ会でよく耳にした会話だが、今では放送局にご意見として届く。違和感を堂々と言いやすい世の中になったという点では大きな前進と言えるであろう。
不快にさせないで、という意味で60代の方からこんなご意見も届いた。「お年寄と呼ばずに、シニアと言って欲しい」。最近ではアクティブシニアという言葉も聞くが、50代の筆者はどちらもしっくりこない。もっとぴったりくる言葉、誰もが不快な思いをしない呼び方はないものだろうか?60までにはまだ少し時間があるので筆者も考えていこうと思う。
さて、世の中では国民に対する2度目の現金給付が関心を集め、給付対象者の条件などについて議論百出。番組の出演者たちの意見も様々だったが、視聴者からは「番組に出ている人たちにはわからないと思うが、現金が今すぐ必要な人もいるんですよ」という内容のご意見が少なからず届いた。
2021年は年明け早々に一都三県に出された第二回緊急事態宣言か ら始まった。賛否両論あったコロナ禍のオリンピック開催、「ビッタビタ」の演技や海の向こうの「ショータイム」が注目を集め、不条理な世の中に放った「うっせぇわ」の言葉が小気味良かった一方で、貧困や自殺者の増加が度々ニュースになった。放送局は何をすべきなのか。声が出せない人にも、もっと思いを寄せる必要があると感じる年の瀬である。
<執筆者略歴>
村田典子(むらた・のりこ)
1965年生、1989年TBS入社、
ラジオニュース、ラジオ制作、情報番組プロデューサー、宣伝部長などを経て
現在、視聴者サービス部長
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