新型コロナ第5波であふれる情報 私たちはどう伝えるのか
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新型コロナ第5波であふれる情報 私たちはどう伝えるのか

【コロナ禍の中、「家庭内感染」や「妊婦のワクチン接種」など正確かつ慎重に伝えなくてはならないテーマをテレビ局はどう伝えてきたか】

古川 修(CBCテレビ報道・情報制作局報道部長)

 「感染はまさに驚異的な状況に陥っていて、暴風雨のまっただ中で先は見えない」
 8月27日(金)の会見で愛知県の大村知事がこう表現した新型コロナウイルス第5波の猛威。CBCテレビの放送エリアである東海三県のこの日の感染者は、愛知が2340人で過去最多、岐阜308人、三重423人。エリア累計は10万人を超え、100人に1人が感染している計算になった。
 名古屋地区の平日夕方ニュース枠は夕方4時~夜7時。各局がコロナ報道一色になっている。新規感染者数の速報、知事会見のまとめ、感染防止対策の呼びかけ、L字画面での情報。これらベースとなる情報に、どんな取材を加えるとエリアの視聴者の役に立ち、感染拡大防止につながるのか。日々、考えながら放送に臨んでいる。

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 愛知・岐阜・三重の3県が緊急事態宣言の対象エリアに追加された8月27日(金)夕方の放送では、新型コロナに関するニュースを約27分間扱うことになった。キャスター、コロナ関連ニュースの専属デスク、取材にあたるスタッフが、朝の全体打合せを終えた午前10時頃から具体的な放送内容を詰めていく。CBCの場合、全国ニュース枠を除くと約2時間がローカルニュース枠だが、デルタ株が急拡大している第5波では、コロナ関連ニュースを取り上げる分数が連日20~30分になっている。従来のローカル報道では考えられなかった分量だ。私たち自身がコロナ禍の日常生活で知りたいこと、疑問に思ったことを取材し掘り下げることが、視聴者にとって有用な情報になるはず。そう信じて、問題に直面する東海三県の現場の取材を続けている。

【引き続き「放送エリア内でも次々に・・・」に続く】

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放送エリア内でも次々に…『家庭内感染』をどう防げばいいのか

 この日は三重県在住で3人の子を育てるシングルマザーへのインタビュー(オンライン取材)を放送した。母親自身が新型コロナに感染したが自宅療養となり困り果てているという。子ども3人を隔離できない実情や、部屋数が限られた住宅での感染防止の限界が見えてきたため、行政などサポート体制の構築が必要なのではないか、と伝えた。スタジオには新型コロナ治療にあたる地元大学病院の医師に生出演してもらった。家庭内感染をどう防ぐか尋ねると、「住宅事情にもよるが、夜寝ている場所が同じだとやはり感染するリスクはすごく高いというデータが出ている」という信じたくない事実にぶつかった。「感染している人が、特に夜寝るときも含めマスクをしっかりとつける」ことも対策の一つだという。これら、取材でわかったことを私たちはシンプルに報じ続けているが、情報を投げっぱなしにしていないか、極端な事例ばかり紹介することになっていないか。言葉を尽くしているが、伝え方が非常に難しいと感じている。

『妊婦のワクチン接種』 地元の視聴者に何を伝えるか

 8月半ば、「妊婦のワクチン接種」について報道する際にも、難しさと向き合うことになった。千葉県で新型コロナに感染した妊婦が入院先が見つからないまま自宅で出産しその後赤ちゃんが死亡したことを受け、愛知県が妊婦のワクチン接種を優先的に行う方針を打ち出したが、そもそも妊婦のワクチン接種にはリスクがないのか、関心事として掘り下げようと考えた。実は夕方ローカルニュース枠のメインキャスターは妊娠7か月。2回のワクチン接種を済ませていた。自らの経験を伝えようと、1回目・2回目の接種時期(妊娠何週目の接種だったか)、接種後の発熱や副反応の状況、それぞれの接種後に妊婦健診を受けエコー検査で赤ちゃんの動きを確認できた、と述べた。そして、日本の産婦人科3学会が妊婦のワクチン接種を推奨する声明を出していることを紹介し、コロナ治療にあたる医師からは「私が友人の妊婦さんから相談を受けたときは基本的に(接種を)おすすめをしているという状況です」というコメントを聞き出した。しかし、これらの要素が揃っても「ワクチンを打ちましょう」とは伝えられない。ワクチンを接種するかしないかは当事者が決めることだ。キャスターは考え抜いた末に、「妊婦さんを含め、今接種をためらっている方がたくさんいらっしゃると思います。お医者さまと相談して信頼できる情報を探してください。ご家族ともよく相談しまして、メリットとかリスク、こういったものを天びんにかけて、接種するかどうかよく検討していただきたいと思います」とコメントした。

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(妊婦さんの取材は感染対策のため病院のスタッフに撮影を依頼)

私たちが伝えた情報を視聴者はどう受け止めているのか

 正確に、そして慎重に。新型コロナの報道では、取材した内容を伝えるまでのプロセスで考えを巡らせるポイントが非常に多い。日々の取材で正しいと思って伝えたことが、この先ずっと正しいとは限らないという怖さとも隣り合わせだ。そんな中、私たちが伝えた情報を視聴者はどう受け止めているのか。妊婦のワクチン接種については、その日のうちに視聴者から「キャスターがワクチン接種をしてどうだったということを身をもって教えてくれたのでとても参考になった」「妊婦の接種について率直に話していたので参考になった」という電話が相次いだ。このように、感謝されることが私たちの力になっているのは間違いない。
 東海三県の感染状況は「暴風雨のまっただ中」で、こうして原稿を書いている今も新しい情報、由々しき問題が次々と出てきている。夏休み明けの学校での感染対策、ワクチン接種の混雑・混乱、野外イベント開催の是非、地元経済・観光の立て直しなど、扱うべき事象はあふれるほどある。エリアの視聴者に地元の情報を伝える報道機関としてこれからも様々な「現場」を取材し続け、今何が起きているのか、問題点は何なのかを確かめる。そして、考え抜いて伝える。基本を大切に取り組んでいきたい。

<執筆者略歴>
古川修(ふるかわ・おさむ)
1972年生まれ 愛知県出身
1995年 CBC入社
2001年~2004年 報道部記者
他部署を経て、2012年~愛知県警キャップ、2015年~編集長
2020年より報道部長

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