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視聴者の声~4月ドラマ、マイナンバーカード

【視聴者センターに寄せられるのは、番組へのご意見だけではない。リアルな声が社会を映す】

村田典子(TBSテレビ カスタマーサクセス部)

 春の連ドラは、お陰様で好評のご意見を多くいただきつつ最終回を迎えた。続編を楽しみにしています、というご意見が多かったのも前クールの特徴だ。
 
 配信でも大人気だった火曜ドラマ「王様に捧ぐ薬指」には「毎週幸せを貰っていたドラマが終わってしまい、王ささロスです」「ハッピーエンドに終わりとても満足。2人のその後を是非ともスペシャルドラマや映画で見たいです」
 
 筆者の周りでも毎週かかさず見てくれた中学生が「キュンキュンして一番好き!」と最高の笑顔で言ってくれたのが印象的だった。
 
 金曜ドラマ「ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と」には「思いやりの心、相手のことを想像で決めつけないできちんと内面を見ることが大事など、たくさんのことを学ばせてもらった」「重要だったのは隕石衝突の結果ではなく、人が生きる過程だったと思っています」といった声が幅広い年代から寄せられた。
 
 スタート前から注目を集めた日曜劇場「ラストマン-全盲の捜査官-」には「毎話、現代社会の問題について深く考えさせられた。最終回は驚きの展開の連続で、切ない真相に涙が止まらなかった。続編を期待しています!」
 「ドラマのお陰で、障がい者の方と出会った際に、自然にお声がけができるようになりました」という内容のご意見もあった。

 また、このドラマには日本在住の外国人の方から英語での感想も頂いた。「福山さん、大泉さんコンビが秀逸!素晴らしい作品を今後も期待しています。アメリカでももっとTBSのドラマが見られるといいのに」。弊社では今まさにTBSのドラマコンテンツを海外でより広めようとしている最中、嬉しい反響であった。
 
 視聴者センターには番組へのご意見や感想だけでなく、暮らしの中で起こっている異変や困り事を切実な思いで訴える声も多く届く。この一ヶ月は保険証との紐付けや本人確認に際してのトラブルが連日ニュースになっているマイナンバーカードに対して、たくさんの声が届いた。
 
 「60過ぎの開業医である自分には、マイナンバーカードを使用する際のPC操作が複雑で非常にストレス。周りでも同様の声が上がっていて、これを機に、もう閉院しようかと考えている開業医もいる。このような状況も報道してもらいたい」。
 
 マイナンバーカードの問題というと、ともすればそれを利用する国民の話ばかりになりがちだが、実際にシステムを導入し、運用していかなければならない病院やクリニックなどの混乱は想像以上だった。これまで実直に診療してきた病院などが閉院を考えるところまで来ているというのは、なんともやりきれない。このご意見を局内でシェアするとともに、ニュース番組でも、病院で働く人々の苦労を取り上げた。
 
 コロナに関しては、静かな叫びのようなご意見を頂いた。渋谷や原宿をはじめ、都内の人出がすっかりコロナ前の活気を取り戻した一方で「持病があるので、せめて優先席の周りではマスクをしてもらいたいと願っている人間がいることを知って欲しい」。確かに第9波の入り口か、と言われるほどコロナ感染者が増えている中、深刻な思いであり、高齢の親を持つ身としてもうなずけるご意見だった。

 よく届くご意見に、「言葉」に関するものがある。「防衛増税の開始時期が予定よりも“後ろ倒し”と示唆、と表現した番組があったが、本来は”先送り”では?」というご指摘があった。
 
 この「後ろ倒し」は最近よく見聞きされる言葉だ。本来は「先送り」や「繰り下げ」だ。しかし、辞書の中には、「前倒しの反対語として言われるようになった」「俗に先送りのこと」と説明しているものもある。”言葉は生き物”とこのコラムでもよく書いているが、数年後には更に浸透している可能性もある。
 
 「辛党」という言葉の使い方にもしばしばご意見が寄せられる。「辛党とは辛い物が好きという意味ではなく、お酒好きという意味ですよね」。ご指摘の通りだ。
 
 日本でもアジアンフードのお店が増え、香辛料を多用する料理をバリエーション豊かに食することが出来るようになり、食のボーダレス化が広まった現在、辛い物好きがかなり増えたように感じる。
 
 巷で「辛党」の意味が違って使われてしまうのはこの現象ゆえか。私の周りのお酒好きの辛党の人は、皆、辛い物も好んで良く食べるので、「辛党」は結局どちらも好きなのかもしれないと、お酒にも辛さにも弱い「甘党」な私は勝手に思ったりもしている。

 さて、TBSの視聴者サービス部はこの7月から「視聴者サービス部」から「カスタマーサクセス部」と名称を変えた。

 カスタマーサクセスとは、カスタマーの成功が会社の成功という捉え方。メディアの進歩や放送局の事業の多角化で、今やTBSのお客様=カスタマーはテレビの視聴者だけにとどまらない。

 かつてのように番組を放送していれば見てもらえるという時代でもない今、私たちは移り変わりの激しい世の中の事象と、視聴者を含むカスタマーの思いやニーズを、これまで以上にしっかり把握し理解することが重要だ。日本のみならず、海外のカスタマーを視野に入れることも正に先送りのできない喫緊の課題である。

 多様なご意見や思いを、これからもつぶさに聞かせて頂き、番組や報道に反映させたり、TBSの提供する様々な事業に活かしていくことで、皆さんの日々の生活が彩られたり、ちょっとでもいい明日(みらい)に繋げることが出来れば本望だ。TBSに声を届けてよかった!と思っていただけるように、今日も現場にその声や思いを、しっかり伝えていく。
 
 2年に渡り、視聴者センターに寄せられた様々な声をもとにお届けしてきたコラムですが、甘い物好きの筆者によるコラムは今月で一旦終わりとなる。時に激辛料理をお出しすることがあったかもしれないが、筆者が目指したのは最後は心がほっとするデザートのようなコラム。美味しく味わっていただけたのかは不安だが、味の好みは人それぞれということでお許しを。またいつかどこかで。

<執筆者略歴>
村田典子(むらた・のりこ)
1965年生、1989年TBS入社、
ラジオニュース、ラジオ制作、情報番組プロデューサー、宣伝部長、視聴者サービス部長などを経て、現職。

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