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視聴者の声~テレビ番組には何ができるか?

【コロナ禍に続く戦禍。ジェンダーや性教育に関する様々な情報と議論。その中でテレビ番組がもつ重要性と可能性は】

村田典子(TBSテレビ視聴者サービス部)

 今年も早いもので半年が過ぎた。日々の生活、そして世界が大きく動いたこの六ヶ月、視聴者からのご意見にも変化が見られた。

 「スタジオでもマスクをして出演した方がいいのではないですか?」など度々いただいたコロナの感染対策についてのご意見だが、今では大分減った。一方で「コロナが落ち着いたなんて言わないで欲しい、まだ入院している人もいます」というご意見も届く。

 世の中がアフターコロナに舵を切りつつあることを理解しつつも、4回目のワクチン接種も始まり、視聴者はまだまだテレビから情報を得たいと望んでいるように感じる。

 この半年間の世界情勢の大きな変化を年頭に予測した人はどれくらいいただろうか。ロシアのウクライナ侵攻が激化するにつれ、「なぜロシアはウクライナを侵攻するのか本当の理由が知りたい」など、関連する視聴者からのご意見の数が激増、1日に3桁以上届く日が続いた。

 侵攻は終わりを告げていないが、番組で取り上げる時間が減少傾向になると、ご意見は、国内の事件や大きな事故の話題へと移り、その後、円安、物価高騰のニュースに関するものも増えてきた。

 「こんな時に贅沢な物を買ったり、食べ物を無駄にする企画はやめて欲しい」「一着2万円以上もするパジャマを紹介しないで。庶民には買えません」「出演者はスタジオで豪華なデザートの試食、値上げなんて関係ないんですね」など、生活に密着した心の叫びだ。

 そしてジェンダーや差別に関するご意見が増えたのも上半期の特徴だ。ご意見からは視聴者の問題意識がかつてに比べ高まっていることを感じる。

 そして、アメリカ映画界の「#Me Too」運動から遅れること約5年、日本の映画界の性被害について、初めて大きく取り上げられたのも今年上半期であった。

 そんななか、5月に「news23」で「日本の性教育が海外に比べて遅れている」という内容がOAされ、女性視聴者からは「この問題は男女で考えること、人権や性暴力などとも密接に関わっている問題なので、国や文科省がどのように考えているかも含めて、また特集して欲しい」というご意見が届いた。

 そして男性視聴者からは「男性こそが自分のこととして考えるべき。自分の子どもと、性に関する話題にどう触れていくべきか悩んでいたが、出演されていた方が説明していたアプローチはとても参考になった」という内容のご意見をいただいた。

 さらに「性教育を家庭にだけ担わせるのは困難で、結局触れないようにしてしまう家庭もある。丁寧に自然体で取り上げた番組があれば、それを子どもに見せることができる。是非また企画を」と続いていた。

 性教育とテレビ。思わぬところにあった視聴者ニーズといえるかもしれない。より良い未来を紡ぐ為に、テレビが果たすべき役割、可能性についてハッと気づかされたご意見だった。

 「news23」にはこんなご意見もあった「中学時代の担任が『news23』を勧めていたのが記憶に残っていて、大人になってからもずっと拝見しています」。

 成長期の体験や、考え方が大人になってからも多くの影響を及ぼすことは珍しくない。それゆえ侵攻下のウクライナの子どもたちのメンタル、そして今後への影響がとても心配される。

 日本では書店に「せんそう」や多様性を理解するための様々な本が並ぶという光景が見られ、テレビやネットからは、連日ウクライナの状況が伝えられた。そんな中で子どもたちなりに考え、親子で話しあった家庭も少なくないだろう。

 コロナ禍に次ぐ戦禍。子どもの心に訴えかける番組の重要性と可能性、そして視聴者がテレビに求めているものとは何か?を改めて考えさせられた2022年の上半期。果たして下半期にはどのような時代を映したご意見が届くのか、引き続き注視していきたい。

<執筆者略歴>
村田典子(むらた・のりこ)
1965年生、1989年TBS入社、
ラジオニュース、ラジオ制作、情報番組プロデューサー、宣伝部長などを経て
現在、視聴者サービス部長

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