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データからみえる今日の世相~内閣支持者はオリンピックでうるおう夢をみる

【紆余曲折の末に開催された東京五輪。日本の人々はどう思ってきたか。期待と不安の間の揺れ動きを分析する】

江利川 滋(TBS総合マーケティングラボ)

 2020年の予定が新型コロナウイルス蔓延で延期となった東京オリンピック。1年経っても緊急事態宣言下でしたが、それでも7月23日に開会式を迎え、8月8日の閉会式で幕を閉じました。

 思えば、東京に2度目の夏季オリンピックを招く試みの始まりは、石原都知事時代の06年東京都議会決議でした。このときは09年のIOC総会でリオデジャネイロが選ばれましたが、11年に再立候補。6都市が争う中を戦い抜いて招致が決まったのが安倍政権時の13年IOC総会でした。
 その頃から、日本の人々は東京オリンピックをどう思ってきたでしょうか。期待が高まってみたり、そうでもなかったり…、といった揺れ動きをJNNデータバンク定例全国調査のデータで追いかけてみます。

【引き続き「東京オリンピックへの思いに影響する内閣支持」に続く】

東京オリンピックへの思いに影響する内閣支持

 TBSテレビをキー局とするテレビの全国ネットワークJNN系列では、毎年11月に「JNNデータバンク定例全国調査」という大きな調査を行っています。

 そこでは、2013年にオリンピックの東京招致が決まったときから、東京オリンピックについての意見を調べ続けてきました。本当は「オリンピックが終わってみて今どう思うか」まで追えれば興味深いのですが、毎年11月実施の調査のため最新データが2020年なのはご勘弁ください。

 質問は、示された東京オリンピックについての意見から、自分の考えに近いと思うものをいくつでも選ぶ複数回答形式でした。
 では早速、結果を見てみましょう。

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 いろいろ目を引く結果の中から、例えば東京オリンピックを「テレビ中継で見たい」か、それとも「会場に行って生で見たい」か、を比べてみます。
 2018年までテレビ派が5割前後、生観戦派が3割弱で推移していましたが、19年に生観戦派が2割を切り、20年にはさらに1割程度まで減少しています。

 19年当時、入場券は抽選販売でしたが、人気が高すぎて入手困難でした。19年に生観戦派が減ったのは、あまりに券が取れなかったせいかも知れませんが、翌20年はコロナ禍で生観戦を控える状況になったのはご存じの通り。

 また東京オリンピックの経済効果も、東京開催で「国全体がうるおう」という意見では、2割強あった当初の賛成率が徐々に下がる傾向でした。
 一方、18年までは3割強の人々が「うるおうのは東京だけ」と思っていて、果たして国を挙げてのイベントたり得るのか、という思いもうかがえました。

 ところが直前の19年になっても大して景気はよくならず、大会経費も立候補時の8,000億円が1兆3,500億円(18年12月発表時点)に増加。20年にはコロナ禍になり、東京がうるおうと思える人は2割を切ってしまいます。

 そんなこんなで、全体の6割くらいは「東京オリンピックが楽しみ」だったのですが、延期決定の20年には5割を切るまで急落してしまいました。

 さて「スポーツに政治を持ち込むな」といいますが、国を挙げてのオリンピック招致に時々の政権や内閣の意向が関わらないわけがありません。とすると、内閣支持とオリンピックへの肯定的意見には関連があるのでは?

 そこを確かめるためにデータ集計した結果が、次のグラフです(注)。

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 これを見ると、東京オリンピックを楽しみにしたり、東京オリンピックで国全体が経済的にうるおうと思ったりする人は、一貫して時々の政権の支持者に多いことがわかります。

 支持される政権がオリンピックを招致・開催するのか、オリンピック招致・開催が政権支持につながるのか。
 どちらもあるかもしれませんが、菅内閣発足の20年は、内閣支持者でも東京オリンピックを楽しみにする気持ちが萎えてしまったように見えます。

 ちなみに、20年の菅内閣は支持43%、不支持26%、その他31%でしたが、これは13年の安倍内閣(支持42%、不支持24%、その他33%)とほぼ一緒です。つまり菅内閣の支持率が低いのでオリンピック期待が下がったということではなさそうです。

 では、20年のオリンピック期待低下は、やはり新型コロナへの恐れの影響でしょうか?実はそうでもないことが、次のグラフでわかります。

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 これは菅内閣の支持/不支持/その他の区分ごとに、「新型コロナなどの感染症が怖い」人とそうでない人で、オリンピック期待を比べたものです。
 するとどの区分でも、感染症が怖いかどうかによるオリンピック期待の差は、ほとんどないことが示されました。

 予定通りなら勢いに乗ってお祭り騒ぎだったかも知れない東京オリンピックも、コロナ禍で一旦停止。そこで落ち着いて考えたら、何をそんなにはしゃぐ必要があったのかと冷めてしまったようにも思われます。

 終わって残ったのは、健闘した選手への祝意、いろいろな不祥事・トラブルの思い出、そして借金の山。1964年の前回大会とは違って「オリンピックってこんなものだっけ」という疑いの念も残ったかも知れませんね。

注: JNNデータバンク定例全国調査では、政治・経済などの話題で回答者の考えに近い意見を複数選んでもらう質問に、調査時点の内閣を「どちらかといえば、支持しているほう」「どちらかといえば、支持しないほう」という選択肢を入れています。
 「支持」または「不支持」だけを選ぶ回答者の他に、両方選んだり、どちらも選ばなかったりする回答者も出てきますが、ここではそれを「その他」に分類して集計しました。
<執筆者略歴>
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は総合マーケティングラボに在籍。

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