コロナ禍のバラエティ~「せっかくグルメ」の場合
新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として厚生労働省首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。またコロナワクチンに関する情報は首相官邸のウェブサイトをご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

コロナ禍のバラエティ~「せっかくグルメ」の場合

【街をぶらぶら歩き、地元の人とふれあい、おいしいものを食べる。そんな人気番組はコロナ禍でどう戦い、視聴者に楽しみを届け続けたか。】

石黒光典(TBSテレビ プロデューサー)

放送スタート直後に緊急事態宣言

 「バナナマンのせっかくグルメ!!」は、バナナマンの日村さんやゲストの方々が日本全国を練り歩き、地元の人に聞き込みしてオススメの地元グルメを探し出す、行き当たりばったりのグルメ旅バラエティです。
 2020年4月5日の日曜日、ゴールデンレギュラーの初回が放送され、視聴率も上々、幸先のいいスタートを切ることができました。
 ところが…2日後の4月7日、緊急事態宣言発令。
 バラエティロケは全面禁止(自粛?)となり、番組は放送2回目にして総集編になるという冗談のような展開に。
 この時から、番組の歴史は、コロナとどう向き合うかの歴史となりました。

緊急事態宣言中

 緊急事態宣言中は、当時どのバラエティもそうであったように、「せっかくグルメ」も総集編をやってその場をしのぐのが精一杯でした。幸いだったのは、ゴールデン昇格の前に、日曜夕方の時間帯でレギュラー放送を2年半ほどやっていたこと。おかげで、ゴールデン新番組でありながら過去の素材に困ることはありませんでした。
 ただの総集編にするのではなく、ステイホームの情勢を考慮して「お取り寄せ特集」にするなど、少しでもヒキのある内容を心掛けました。この「お取り寄せ特集」は大変な反響があり、お店に注文が殺到したらしく、お世話になったお店に恩返しができました。

緊急事態宣言あけ~ロケをどうする?

 自粛期間中、最大の懸念事項は「緊急事態宣言が明けたあと、ロケをどうするか?」ということでした。
 なにせ「グルメ」と「旅」という番組の2大要素が、コロナ禍で急にハードルの高いものになってしまったのです。日村さんが全国の町をブラブラ歩いて、出会った人にオススメの店を聞き、お店にアポなしで飛び込む…番組スタート時から変わらないロケスタイルが、もう同じようにはできない、というまさかの事態になりました。

 これまでのスタイルを捨てて、新しいグルメ探しの方法を考えなければならない。
 そのために何度も何度も議論を重ねました。そんな中で、ここだけは絶対に変えないと決めていたのは、「日村さんが地元の人とからむこと」。なぜなら、日村さんと地元の方とのふれあいこそが「せっかくグルメ」の面白さの真髄であり、我々が一番大切にしていることだからです。

 どうすれば、この面白さを損なうことなく、不特定多数の人との接触を避け、お店に迷惑がかからないようにロケできるか?
 いくつものアイデアが出た中で、最終的にたどり着いたのが「日村ロボ」です。
 地方の街角に、カメラがついた日村ロボを設置し、日村さん本人は貸会議室などの隔離された別場所にいて、道行く人にリモートで話しかける。オススメの店を教えてもらったら、お店に電話でアポを取り、人のいない時間帯でのロケをお願いする。
 これなら、不特定多数の人と接触することなく会話ができ、お店にも迷惑にならない形でロケができる。コロナ禍で、リモート会議やzoom飲み会などのオンライン文化が一気に普及したからこそ出たアイデアでした。

6②画像②

 正直、撮影するまではリモートでの会話がどうなるのか不安でしたが、そこはさすが日村さん、対面で話す時と比べても遜色なく、いや、むしろリモートを使った遊びやリモートゆえのハプニングを上手く笑いに変えてくださり、これまで以上に地元の方への聞き込みが見応えのあるものになりました。

 また、会議室とお店の画ばかりになってしまわないよう、日村さんのドライブカットを入れ、美しい景色が見られて「旅」感を味わえるようにしました。

再度の緊急事態宣言

 2021年1月7日、再び緊急事態宣言が出されました。
 またしてもタレントさんを連れての地方ロケは難しいという状況に…番組は再びピンチに直面しました。この難局をどう乗り越えるか…簡単に考えるなら、しばらくスタジオをメインにした企画にするか、総集編にするか、ですが、このとき総合演出の平野くんが言ったのは、「我々はすでに日村ロボというコロナに対応した武器を持っている。この武器を活かして、さらにロケを進化させて、緊急事態でもやれることをやりたい」ということでした。

 そこで考えたロケスタイルが、日村ロボを地方の町に置き、日村さんは東京からリモートで聞き込みをする。現地の店には行けないので、「お取り寄せ」に限定して聞き込みし、聞いたグルメを実際にお取り寄せして、後日、日村さんがTBSのスタジオで食べる、というもの。しかも、お店の雰囲気を味わうために、店内の写真をパネルにしてセットを組み、食べる際には現地の店員さんとリモートをつなぐという手の込んだものです。
 これにはVTRを見た設楽さんも「本当にお店にいるみたい」と驚いていましたし、視聴者からも「ここまでやるか!」と賞賛の声を頂きました。
 緊急事態宣言にひるむことなく、東京にいながらにして、いつもと変わらない面白さを提供するぞという、総合演出の意地が実現させたロケだと思います。

6②画像③

 原稿を書いている現在、3度目の緊急事態宣言中ですが、番組ではさらにロケを進化させるべく、新しい企画を模索しています。

 コロナ禍で、当たり前だったことが当たり前ではなくなった今だからこそ、「旅に出て美味しいものを食べる」ことの楽しさを、今後もお届けできればと思っています。

6②画像④

<執筆者略歴>
石黒光典(いしぐろ・みつのり)
 1999年TBS入社。コンテンツ制作局バラエティ制作一部。担当番組「学校へ行こう!」「金スマ」「ズバリ言うわよ!」「もてもてナインティナイン」「所さんのニッポンの出番」など。
 現在、「バナナマンのせっかくグルメ!!」「がっちりマンデー!!」「オールスター感謝祭」などのプロデューサー。

この記事に関するご意見等は下記にお寄せ下さい。
chousa@tbs-mri.co.jp


ありがとうございます。今後の『調査情報デジタル』にご期待ください。
TBSが1958年に創刊した情報誌「調査情報」が、デジタル版の定期購読マガジンとしてリニューアル。テレビ、メディアに関する多彩な論考と情報を掲載。最新号のみ有料(200円)ですが、バックナンバーは常に無料でお読みいただけます。