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<シリーズ SDGsの実践者たち> 第29回 小学生が未来を考える「キッズ SDGs EXPO」

【小学生が自ら考え、楽しみながら実践するSDGsの提案とは】

「調査情報デジタル」編集部

児童が自ら考えたSDGsの取り組み

 「地球温暖化の原因は、私たちが出す二酸化炭素と言われています。この二酸化炭素が地球の上空を覆う温室効果ガスとなることで、地球が温められ、気温が上がっています。私たちはごみを減らすことで、二酸化炭素の量を減らせるのではないかと考えました」

 壇上で発表しているのは、東京都内の小学生たち。SDGsについて自ら考えて、楽しみながらSDGsの取り組みを体験できる展示を製作した。

キッズ SDGs EXPO(2024年1月28日・東京都練馬区)

 このイベントは東京都練馬区で1月28日に開催された「キッズ SDGs EXPO」。学童保育を運営する明光キッズが2021年から実施している。今回は練馬区と世田谷区の8つの学童保育に通う児童が、気候変動をテーマに自分たちでできることを考えた。

 「スマイルチャーム」と名付けられた色鮮やかなチャームは、ペットボトルのキャップで作ったもの。キャップをニッパーなどで細かく刻んでペレットにして、フレームに入れてからアイロンで溶かした。ごみになるものを、世界に1つしかないチャームに変身させた。

ペットボトルキャップを刻んだペレット

 首飾りやブレスレットを作っているブースでは、カラフルなビーズが使われている。このビーズは広告のチラシから作ったものだ。

 他にもペットボトルから作ったランプシェード、牛乳パックから作ったコースターや本格的なカバン、拾ったドングリやマツボックリなどで作ったアート作品など、本来であれば捨てられるものを使って楽しむ方法が提案されていた。

ペットボトルから作ったランプシェード
自然のものとアートを組み合わせた作品
火・水・電気を使わないパフェを販売

SDGsを「学ぶ」から「実践」へ

 明光キッズが運営する学童保育では、アクティビティの時間にSDGsについて考えるカリキュラムが組まれている。始めたばかりの頃はSDGsの内容について学ぶことが中心だった。それが、学びを続けていくうちに、今では子どもたちが日常生活の中でできることを自ら考えて、実践することが当たり前になっている。

 もちろん、入学したばかりの1年生はSDGsのことを知らない。カリキュラムの時間では、3年生や4年生が中心となってSDGsのことを伝えている様子も見られるという。参加した子どもたちに、日頃気をつけていることを聞いてみた。

 「つけっぱなしの電気を消します。暖房も寒い時にだけつけます」

 「給食を残すと二酸化炭素がいっぱい出ますので、残さないようにするため、おなかがパンパンにならない限りおかわりしています」

 今回展示をした学童保育の中には、キッズEXPOのための展示を考えるほかにも、町に出てボランティア活動をしているところもある。区から花壇を任されて美化活動に取り組んでいる子どもたちもいれば、夏休みに遊んでいる公園までの道のりでごみ拾いをして、「思ったよりもごみがたくさん落ちている」と感じた子どももいる。日々の取り組みの中で、少しでも地球温暖化を抑えることができればと考えているようだ。

 「SDGsマスターはだれだ?」と題したブースでは、SDGsに関するクイズを用意。難易度を「簡単」「普通」「難しい」の3段階に分けて、子どもから大人まで誰もが楽しめるようにした。ステージ発表ではこんな問題を出していた。

 「日本は世界で何番目に二酸化炭素を排出しているでしょうか。5秒以内にお答えください」

 大人でも簡単には答えられない。5秒後に答えを披露するとともに、排出を抑えるための身近な行動を提案した。

 「正解は世界第5位です。1位は中国、2位はアメリカ、3位はインド、4位はロシアとなっています。しかし、二酸化炭素は一人ひとりの意識によって、少しずつ排出を減らすことができます。たとえば、水筒を持ち歩いてペットボトルの利用を減らしたり、シャワーを使う時間を減らしたり、電気を消したりすることなどは、子どもでも大人でもできる環境に優しい行動です」

2023年の平均気温は観測史上最高

 2023年を振り返ると、気温の高い時期が長く続いたことを覚えている人も多いだろう。気象庁によると2023年の平均気温は平年値を1.34度上回り、1898年の統計開始以来最も高くなる見込みとなった。過去126年で最も高い、歴史的な高温の年だった。

 ただ、高温だったのは日本だけではない。世界気象機関(WMO)は、2023年の世界平均気温が観測史上最高だったことを認定した。2015年に採択されたパリ協定とSDGsでは、世界的な平均気温上昇を産業革命前に比べて2度以下に抑えることを目標とし、1.5度以下に抑制することを努力目標に掲げている。それが、2023年の世界平均気温は、産業革命前から1.45度前後(1.33~1.57度)上昇した。何も努力しなければ2035年頃に1.5度上昇すると見られていたが、すでに迫る状況となった。

 しかも、2024年はさらに高温になる可能性があるとWMOは声明を出している。高温になれば海面水温が上昇し、南極海の氷面積が縮小する。異常気象や災害などが発生する可能性も高まる。

 地球温暖化が進むことで大きな影響を受けるのは、未来を生きる子どもたちだ。発表した小学生の1人は、参加した思いを次のように話した。

 「気候変動のことをたくさん知ってもらって、みんなにSDGsの目標を守ってほしいなと思います」

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