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視聴者の声~言葉は世につれ

【放送で使われる言葉に対しても視聴者から様々なご意見、ご指摘が寄せられる】

村田典子(TBSテレビ視聴者サービス部)

 三省堂が、同社が編纂する「三省堂国語辞典 第八版」を年末に発売すると発表、約8年ぶりの全面改訂版となるこちらには3500の新語が掲載されることになった。「ワンチャン」「ラスボス」などコロナ禍で使用頻度が増えたゲーム関連の言葉や「マリトッツォ」など流行りのスイーツ名まで多彩な新語は正に時代を語るにふさわしい。流行語と違い、長く使われるであろう言葉が新語として選ばれていると思われる。流行語だと「親ガチャ」あたりも選択肢に入ってくるのだろうか。果たしてこの「新語」の中から幾つの言葉が何年も色あせることなく使われ続けることになるのか興味深いところ。
 視聴者からも「言葉」に関するご意見は多く届く。先月紹介した「野戦病院という言葉はふさわしくない、臨時病院でいいのでは?」というご意見はTBSでも早速現場に反映された。ネットなどでもちょっとした論争にもなり違和感を感じた人は少なくなかった。「Nスタ」では井上アナウンサーが番組の中で「野戦病院は使わず、臨時病院などと呼んでいく」と視聴者の声に応えた。
 今年、何度も聞かれた「レガシー」や「ガバナンス」、「エシカル」など、カタカナ言葉が増えてくると「もっとわかりやすい日本語を使って欲しい」というご意見も届く。テレビは老若男女多くの方にご覧いただくので、なるべく平易で分かりやすい言葉を使うようにしたいところ。しかし、例えば「もったいない」や「面倒くさい」のように、日本語にも英語ひとことで表すのが難しい言葉があるように、カタカナ言葉にも日本語で表しにくいものもあるのだろう。
 TBSがグループを挙げて取り組んでいる「SDGs(Sustainable Development Goals)」。日本語では「持続可能な開発目標」と訳されるが、少々お堅い。「SDGs」というまるでバンド名のような(!)音の響きに導かれ、社会や学校などで様々な事を学び取り組むことで、言葉の持つ重要性を実際に体感、日本でそして世界で急速に市民権を得た言葉でもある。
 言葉は使われ方でなじみ方も変わってくる。「ノンバイナリー」という言葉は、人気のアーティストがSNSで発したことで一躍日本でも注目された。「トリアージ」はドラマ「TOKYO MER〜走る緊急救命室〜」で頻繁に使われたことが言葉の理解に一役買ったかもしれない。
 また、数年前まではLGBTと言われていたが今では「LGBTQ」「LGBTQ+」と言われているように、言葉は環境や時代と共に変化しながら生きているというところも面白い。
 変化といえば、「”感染拡大を鑑みて”ではなく”感染拡大に鑑みて”ではないですか?」というご意見も届いた。確かに正解は「○○に鑑みて」。しかし、この言葉もかつては「○○を鑑みて」と使われていたが、今では「○○に鑑みて」のほうが使われるようになったという。時代とともに言い方や使い方が変わる場合もあり得るのだ。「雪辱を果たす」と「雪辱を晴らす」はどちらが正しいのかという声も以前からよく聞く。ある調査では約半数の人が「晴らす」と思っていたという結果もある。いつしか「雪辱を晴らす」が正解となっている時代が来るかもしれない。
 ドラマの影響で「渡る世間」に続く言葉を「に鬼はなし」ではなく「は鬼ばかり」と思っていた人が、特に若い世代に多いというのも有名な話だ。
 テレビが言葉に与える影響は少なくない。とすれば、ただ単に言葉遣いが間違っている・いないだけではなく、私たちは日頃から放送で発する言葉の選び方にも敏感になる必要があるだろう。
 さて、今年の流行語には何が選ばれるのだろうか?「ビッタビタ」「ブレイクスルー感染」等、オリンピックやコロナに関する言葉が出揃うだろうが、世の中に明るい兆しが感じられ、それにふさわしい言葉が選ばれることを祈るばかりである。

<執筆者略歴>
村田典子(むらた・のりこ)
1965年生、1989年TBS入社、
ラジオニュース、ラジオ制作、情報番組プロデューサー、宣伝部長などを経て
現在、視聴者サービス部長

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