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<シリーズ SDGsの実践者たち> 第3回 フィンランドの企業が取り組む「循環経済」

【フィンランドはSDGs達成度で世界第一位となった。SDGsに対するフィンランド企業の先進的な取り組みを、実例を挙げて紹介する】

「調査情報デジタル」編集部

 SDGsのトップランナーと言える国が北欧のフィンランド。SDGs達成度世界ランキング「Sustainable Development Report 」で、2021年に初めて1位を獲得した。前回はフィンランドの国民が「雪が降らなくなった」ことを実感するなど、気候変動問題を身近に感じることで、温室効果ガスの排出量削減に積極的に取り組んでいることを伝えた。

 今回はSDGs達成度世界一の背景にある、企業の取り組みについて触れてみたい。フィンランドの企業活動で重要なキーワードは「循環経済」。その実例について、前回に続きフィンランド大使館のレーッタ・プロンタカネン参事官に聞いた。

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レーッタ・プロンタカネン参事官

【引き続き「豊富な森林資源を生かした製品開発」に続く】

豊富な森林資源を生かした製品開発

 「この時計を持ってみてください」

 そう言ってプロンタカネン参事官は、自身がつけていた時計を腕から外して見せてくれた。

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 持ってみると、見た目の印象よりも軽い。時計のケースやバンドなど、文字盤以外の部品は全て木材から作られたものだった。

 「このメーカーは公園など公共の場所で伐採された木を使って、木製の腕時計を作っています。嵐によって倒れてしまった樹齢150年の木を使った時計なども販売されました。木があった場所を明示して売り出すことで、マーケティングの効果も出て、あっという間に売り切れます」

 プロンタカネン参事官の時計は、フィンランドの時計メーカー「AARNI」が手がけたもの。フィンランドでは豊富な森林資源を生かして、他の国では化学製品などの素材で作られるものも、あえて木材を使って作る企業が多い。

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 ハンドクリームを入れるこのケースは、手触りはプラスチックそのもの。材料はやはり木くずだった。バイオ素材を開発する「Sulapac」が、森林産業から出た不要な木材で、プラスチックの代替品として使える容器を作っている。濡らしたまま放っておくと、生物分解して溶けてしまう。各社は森林資源の活用を研究し、製品化しているのだ。

天然資源の活用と徹底したリサイクル

 フィンランドがSDGs達成度世界一に選ばれた背景には、国民の意識の高さに加えて、国内企業による徹底した「循環経済」があるとプロンタカネン参事官は説明する。

 「循環経済を支える要素の一つが、天然資源の活用です。フィンランドはEUの中でも最も森林資源が豊富な国なので、森林産業の副産物を使って新たな製品の開発に取り組む企業は多いです。パルプからセルロース繊維を作るなど、新たな素材のテキスタイルを生み出した企業もあります。使う水の量が格段に少ないので、綿よりも断然環境に優しい製品です。

 もう一つは、不要になったものが新しいものに生まれ変わる技術です。ある企業は、軍隊で使ったパラシュートや、車のシートベルトなどの素材を再利用して、バッグやシャツ、マスクなどを作っています。他にも再生生地を100%使ったファッションブランドもあります。各社とも単なるリサイクルではなく、イノベーションを発揮して新たな素材や製品を生み出しています」

 老舗のテーブルウェアブランドが手掛けた、再生ガラスを使った食器や雑貨もフィンランドでは人気が高いという。新たな素材を使うのではなく、リサイクルして再生させることが、フィンランドの企業では当たり前になっている。

 「フィンランドの消費者は、企業に対して環境に優しいことをするべきだと期待しています。環境に優しくないイメージがつくと、企業にとってはビジネス上のリスクになります」

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デジタル技術の活用でフードロスに取り組む

 循環経済は人々の生活に身近なところにも浸透している。その代表的なものがデジタル技術による変革、いわゆるDXを活用したフードロスの取り組みだ。

 特に使われているのが、スマートフォンのアプリ。フィンランドではカフェやレストラン、パン屋など、1日の営業の終わりに残っている商品を知らせるアプリの人気が高まっている。アプリを確認して、仕事の帰りに割引になった商品を買い求める人は多い。

 また、スーパーマーケットのチェーンの中には、販売されている一品ごとに原材料の調達から生産、流通などで排出される温室効果ガスの量、いわゆるカーボンフットプリントを確認できるアプリを開発しているところもある。

 「地球の反対側から運ばれてきた商品を、冷蔵庫に放置したまま結局廃棄した場合、排出される温室効果ガスはかなりの量に増えていきます。買ったものは必ず使い切ることを心掛け、アプリを使うことによってカーボンフットプリントも意識することができます」

 スーパーでは形の良くない野菜が普通に売られ、レストランでも調理に使われる。食品の廃棄物を一切出さないレストランもある。循環経済が生活にも根付いていることも、SDGs達成度世界一の背景にありそうだ。

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 最後に、プロンタカネン参事官に、日本で循環経済が根付く可能性があるかどうかを聞いてみた。

 「日本の皆さんと話していると、SDGsへの関心が高いと感じています。大使館で日本の女子高校生が自分たちの夢についてスピーチをするキャンペーンを開催した際には、多くの高校生が日本をより環境に優しい社会にしたいと語っていました。

 若い人たちが気候変動問題を意識して、循環経済を求めるようになることで、日本の社会にも根付く可能性があるのではないでしょうか」

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