視聴者の声~視聴者を「置いてけぼり」にしないために
村田 典子(TBSテレビ視聴者サービス部)
4月、テレビ局の番組表は新しくなる。新しい番組への期待や好意見を頂く一方で、以前の番組を続けて欲しかったというご意見もある。
終わりの時期が決まっている連ドラとは違って、バラエティ番組の場合は視聴者にとってお別れが突然のこともある。事前にぎりぎりまで番組終了が公表されないと「なんだか視聴者は置いてけぼりのような気持ち」というご意見もあった。
置いてけぼり、この言葉には気を付けたい。「この企画は今の時代に合っていないと思います」というご意見も、本当にずれている場合はぐさりと来る。
視聴者の気持ちは時代や、その時の社会情勢などで常に変化するものだ。そんな視聴者の気持ちがくみ取れていなければ視聴者には「わかってないなぁ」とそっぽを向かれるだろう。視聴者が番組を見なくなるきっかけは案外そういったところにあるのではないだろうか。
とある会社の取締役が大学の社会人向け講座での不適切発言から役員を解任になったが、あれは「わかってないなぁ」の最たるものだったのであろう。ジェンダー差別やアンコンシャスバイアスがかかった発言などに対してのご意見は以前より確実に多くなっていると実感しているが、これは日本がやっと世界水準に近付こうとしているという現れだろう。なんといっても日本のこの分野の遅れは相当なものだ。日本映画のme,too問題も見過ごせない動きの一つである。
映画と言えば、3月終わり、アカデミー賞でのウィル・スミスとクリス・ロックの事件に関しても多様なご意見が届いた。
「暴力に訴えるのはおかしい」「病気の方の容姿を笑いにする方が悪い」などネットでも様々な声があったが、文化や社会背景の違いからか、アメリカと日本での受け止め方に違いも出ていた。(この件についてはまた改めて取り上げたいと思う)
4月は番組のコーナーがなくなったり、コーナーの時間帯が変わったりもする。そんな時「その曜日の、その時間に見ることが習慣になっていたので、以前の時間に戻して欲しい」というご意見が来ることもある。
朝の時間帯などは、テレビ番組は時計のような役割も果たしている。毎朝、毎日、毎週、一人一人の日常に、あたり前のように番組が存在できたら、覚えて貰えることができたら、それは大変有難い。
4月からはTVerでゴールデンタイムの同時配信も始まった。手元のスマートフォンでテレビ放送とほぼ同時刻に番組をご覧いただける。この新たな幕開けにより様々な可能性が広がり、視聴者にとって番組がより身近な存在になれば嬉しい限りだ。
一周年を迎えた「ラヴィット!」
さて、4月で丁度一周年を迎えた「ラヴィット!」には、お祝いのメッセージを沢山頂いた。
「とにかく出演者皆の仲の良さが伝わってくるのがいい。その様子を見ていてこちらも楽しくなる」「世の中、暗くなることが多いが、この番組を見ると笑顔になれる」「ニュースや情報番組とは違って緊迫感を感じなくて済むのが有難い、子どもと一緒に見ています」という声の中に「親しい人たちと別れて、4月から新社会人になり憂鬱な時もあったが、出勤前に笑わせてもらい元気をもらっている」という新生活を始めた方からのメッセージもあった。
4月になってもコロナ禍は続き、ウクライナ情勢の先行きも不透明、円安も進み物価も上がる。視聴者の中にも様々な思いがよぎる。
そんななか、「THE TIME,」にも、「この季節は疲れて気持ちが落ち込むこともあるが、安住アナウンサーも、そういうことがありますよね、と話していて、皆そうなんだなぁと救われた気持がした」という内容のご意見が複数届いた。テレビに出来る大事なことの一つは、こんな風にさりげなく視聴者に寄り添うことだと感じた。
最近「サンデーモーニング」の新しい解説者として出演されているサヘルローズさん、ウクライナ情勢の話題で「たとえ破壊された街が復興されたとしても、壊された人々の心というのは、一生直すことが出来ない」とコメントされた。
イランで戦乱の中、孤児として過ごした経験も持つ彼女の言葉には魂が宿っていた。「その真剣で誠実なコメントに、感銘を受けました」視聴者もまた番組を通して、世界の人々の苦悩に寄り添ってくれるのだ。
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