視聴者の声~多様性への配慮
村田典子(TBSテレビ視聴者サービス部)
この夏は、「Nスタ」井上貴博アナウンサーのノーネクタイ&カジュアルな服装が視聴者から好評を得たが、残暑もほぼおさまり、街でジャケットやカーディガンをはおる人を見かけるようになった頃、再びスーツ姿に。生活に即したニュースをお届けする立場であるアナウンサー、肌感覚を視聴者と共有し、それを示すことはとても大事なことだ。
9月は夏のドラマが終了を迎える時期でもある。有難いことに深夜ドラマを含め4本の連続ドラマはいずれも好評で多数の感想やご意見を頂いた。
その中にドラマの解説放送についてのご意見があった。解説放送とは本来、目の不自由な方々に対して副音声による解説を行い番組内容をお伝えするもの。ドラマの場合はセリフ等だけでは表現しきれないト書き的な情景描写などを、ナレーターが補完的に説明をして伝えていく。
「裁判や訴訟など、大人向けのドラマは小学4年生の子どもには難しい箇所もあり、これまでは細かく説明しながら見ていましたが、解説放送版に気づいてそちらを見たらわかりやすかったです。色々な人に伝わりやすく、とても良い試みだと思いました」というものだ。夏休み期間中ということもあり、テレビのツールを利用して一緒にドラマを楽しんでいる親子の光景が浮かび、解説放送がリアルに役に立っていると感じた。
この夏は子どもが犠牲となる痛ましい事件が多かった。園児のバス置き去り事件に対しては、ご意見からも視聴者の強い憤りを感じた。つらすぎてニュースを見られないという声も寄せられたが、同時に「我が家では以前から子どもに自分で助けを呼ぶ方法を教えている。番組でも取り上げてほしい」という具体的な方法を含めたご意見も頂いた。
この件に限らず、事件や事故を防ぐための有用な自己防衛策などを広く紹介する事はテレビの大切な役割である。ニュースや情報番組を見たことがきっかけで、家族間に「こういう時はこれこれに気を付けて」という会話が自然に生まれれば本望だ。
昨今は、個性を決めつけたり、多様性を無視したような言い回しには特に敏感にご意見が来る。家族で一緒にご覧いただいていると思われるもののひとつがグルメものだ。
「お父さん向けにはボリュームたっぷりカツカレー、お母さん向けにはふわふわオムカレーや野菜カレー・・・このような表現をされると女性がカツカレーを頼みにくくなるのでやめて欲しいです」というご意見があった。
「“女子中高生ならカフェ、と思いきや、食べているのはなんと串揚げ!”というナレーションがありましたが、私は甘いものより串揚げが好きだし、串揚げは女子が食べるものじゃないというニュアンスを感じます。表現が古典的では?」と続いていた。
「料理がうまいから良い奥さんになりますね、なんて今の時代に言わないで下さい。がっかりです」というご意見も届いたが、もしかしたら親子でテレビを見ながら「料理が下手だと良い奥さんになれないの?」「そんなことないわよ。今時古いわよね。この考え方」「じゃあ良い奥さんってどういう人?」というような会話があったかもしれない。
語られた場所が夕食時のお茶の間であってもこれは今、世界が注目しているジェンダー問題の一端だ。テレビをきっかけに、家族間で討論を交わしたり、思いがけない考え方の違いに気づいたりする。
もちろん、テレビが家族をつなぐメディアであることを改めて実感するご意見も。バラエティ番組の「バナナサンド」の人気コーナー、ハモリ我慢ゲームには「子どもも一緒に歌っているので、歌詞のテロップの漢字にルビをふってもらえませんか」。似たような要望は複数届いており、出演者たちと一緒に、家族で歌いながら番組を楽しんで頂いている微笑ましい情景が浮かぶ。
10月は「オールスター感謝祭」に続き、「お笑いの日」など特番も多い。家族で、あるいは友人と、大事な人と、一緒でも離れていても、或いは一人でもSNSで誰かと繋がって、同時にテレビの生放送を楽しみながら、秋の夜長の会話が弾みますように。
コロナ禍からはようやく脱しつつあるものの、台風などの自然災害、どこを向いても値上げラッシュの秋。こんな時だからこそ、少しでも楽しいひと時になれば・・・そんなことを切に願う今日この頃である。
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