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データからみえる今日の世相~夏、変わらぬ思い、変わる熱~

【夏が来れば思い出す……、それって百年後も同じ?】

江利川 滋(TBS総合マーケティングラボ)

 ようやく梅雨も明けて夏本番。
 気象庁のホームページによると、関東甲信地方の今年(2023年)の梅雨明けは7月22日頃で、平年より3日遅かったとのこと。
 今年は梅雨明け前からとにかく暑くて、「梅雨が明けないまま夏本番になってしまうのでは」と思ったほどです。

 何はともあれ、夏は来ぬ。
 夏といえば、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。

 浴衣で夜祭り、盆踊り。出店の屋台でかき氷。抜けるような青空に入道雲が広がって……。1990年のヒット曲、井上陽水『少年時代』のような、さわやかで明るく、懐かしいイメージは、いかにも夏らしい感じ。
 そこにビアガーデンと枝豆も付け加えたいのは、オジさんの心情。

 では、世の人々が抱く夏のイメージはどうなのか。それをデータでとらえているのが、TBS総合嗜好調査です。

夏といえば、あの「植物」

 TBS総合嗜好調査には、季節のイメージを尋ねた質問がいくつかありますが、次に示す棒グラフは「夏にふさわしいと思うもの」をいくつでも選んでもらう質問の結果を最新データ(22年)と09年で比べたものです。

 春夏秋冬、それぞれの季節ごとに17個の選択肢(「この中にはない」含む)があるこの質問を09年に始め、現在まで毎年調査中。

 最新データで上位10個を示した夏についての結果では、パッと見た感じの顔ぶれは昔も今も変わらぬ様子。1位は実に7割が選んだ「ヒマワリ」で、これに「花火」「セミ」「スイカ」と続いていきます。

 細かく比べると、「花火」や「セミ」「アサガオ」などが昔より3~4ポイント低下していて、「浴衣」や「盆踊り」は5~6ポイントも下落。
 なぜそうなのか、はっきりしたことは言えませんが、コロナ禍で人が集まる花火大会や盆踊りが中止になり、浴衣の出番も無くなって……、というようなことなのかも知れません。

 とはいえ、「夏」のイメージは昔も今もおおよそ同じもののようです。

夏といえば、あの「色」

 TBS総合嗜好調査には、季節のイメージを問う質問として、季節の「色」を尋ねたものもあります。
 「夏を表す気分や感じに近い色」の質問では、15個の選択肢(「この中にはない」含む)から1つを回答。こちらは最新データの上位5個について、全体および年代別に集計してみました。

 一目瞭然ですが、「夏の色」として半数弱の人が選んだのが「青」。
 一般に寒色の青には「涼しい」「冷たい」といった印象がありますが、夏の色としては、青い空や青い海のような、澄み切った自然のイメージでしょうか。ジメジメした梅雨が明けて、暑いけれどもカラッとした「さわやかさ」が感じられる気もします。
 その裏返しで、暑さや太陽を連想させる「赤」や「オレンジ」、ヒマワリの「黄色」など、暖色系の選択率はどれも1割前後。初夏の新緑を思わせる「緑」も1割弱程度でした。

 年代別に見ると、30~40代では青の選択率が他の年代より高く、赤の選択率が低いですが、大体似たり寄ったりです。

 ちなみに「季節を表す気分や感じに近いと思う色」を尋ね始めた01年も、1位が青(35%)、2位が赤(21%)、3位がオレンジ(16%)、黄色と緑が同率4位(6%)で、全体で集計した結果の順位は全く一緒でした。
 01年当時は調査対象者が男女13~59歳だったので、60代以上を含む最新データと結果の数値を直接比べることはできませんが、01年は今より青がやや少なく、赤がやや多かった印象です。

夏が熱を帯びると、冷めるもの

 夏の風物詩や色のイメージは昔も今も変わらないようですが、確実に変わっているのが、夏の「暑さ」です。

 今年(2023年)7月の平均気温25.96度は日本の観測史上最高。「この126年で、7月の平均気温は1.5度ほど上が」り、「特に2000年以降は気温の上がり方が急激」とのこと(23年8月2日付朝日新聞)。
 別のデータとして、84年以降の7~9月について、東京の猛暑日(最高気温35度以上)日数を、赤い棒グラフで示してみました。

 これを見ると95年が13日で突出していますが、2010年以降は10日を超える年が頻発。地球温暖化の影響を実感するデータです。

 そこにTBS総合嗜好調査が84年以降毎年調べている「好きな季節」質問から、「夏」の選択率を折れ線グラフにして重ねてみました。すると、3割前後で推移してきた夏の人気が、ここ何年かは減少傾向にある感じです。
 過去にも80年代後半から90年代初頭にかけて夏の人気が下がったものの、また持ち直したりしたので、今回もそのパターンかどうかは成り行きを見守る必要があります。

 今はまだ、夏といえばヒマワリや花火を思ったり、夏の青さを思ったりと、夏は昔と変わらぬイメージを保っています。
 しかし、仮にこのまま猛暑日連続の「暑すぎる夏」が続くようだと、つらさが勝って夏が好きだという熱が冷めてしまいかねません。

 夏の暑さがほどほどなら、ちょっとした生活の工夫で涼を得たりして、夏を楽しむ余裕もあろうというものです。百年後の子孫もそうした夏を楽しめるようだとありがたいですが、どうなることやら。

<執筆者略歴>
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。
視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は総合マーケティングラボに在籍。

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