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コロナに翻弄された信州の“三大祭り”と報道

調査情報デジタル

【昨年はコロナ禍で延期となった善光寺の「御開帳」。一年ずれたことで信州の三大祭りが一年のうちに重なる異例の年となった。それぞれの制約を抱えながら実現にこぎつけた祭りと、みずからもコロナ禍に襲われながら、それを伝えた地元放送局】

池野 真史(信越放送報道部デスク)

いつもと違う「三大祭り」

 「善光寺の御開帳」(4月3日~6月29日)と「諏訪大社の御柱祭」(4月2日~6月15日)そして「飯田お練りまつり」(3月25日~27日)。いずれも数えで7年に一度開かれる信州の大祭です。

 前回まで御開帳は、御柱祭やお練りまつりの前年に開かれましたが、去年、御開帳がコロナで1年延期になったため、3つの祭りが重なる異例の事態となりました。

 しかも、御柱祭は柱を山から里に運び出す「山出し」(4月2日~10日)について、第6波で感染者が高止まりしていたこともあり、トレーラーで行うことが決まりました。

 この祭りは、山で選んだ巨木を諏訪大社の境内に立てるまでを住民の手で行うのが習わしで、最後の「建御柱」を終えたとき、柱は神になると言われています。住民の絆を深める役割も果たしてきた「山出し」を人力で行わないことは、1200年以上とも言われる祭りの歴史でも初めてのこととされています。柱が豪快に急坂を下り、御柱祭を象徴する場面として知られる「木落とし」も中止になりました。

トレーラーによる御柱祭山出し

 通常であれば祭りの活気や華やかさをいかに伝えるかがニュースの勝負どころですが、今回は地元の人たちの苦渋の思いや、制限がある中でいかに祭りを盛り上げるか試行錯誤している姿を伝えることに重点を置きました。

 一方、御開帳やお練りまつりは、感染防止に気を配りながら実施されました。いずれも開催の可否の基準などが盛り込まれたコロナ対策が最終的に決まったのは本番まで1か月を切ったタイミングでした。落ち込んだ経済の回復につながる起爆剤にしたいとの期待の一方で、感染状況をぎりぎりまで見極めなければならない主催者側の苦しい胸の内が伺えました。

放送局にもコロナ禍が

 それぞれの祭りが幕を開けた3月下旬から4月、まさかのタイミングでニュースを送り出す我々自身も厳しい状況にさらされます。部員やスタッフのコロナ感染、家族の感染に伴う自宅待機、さらに部員やスタッフ同士の接触による自宅待機が相次ぎます。

 この時に痛感したのが、接触者を広げないことの難しさです。本来は、アナウンサーやカメラクルー、編集マンと、チームで分業しながら臨む仕事です。その分、接触者はどうしても芋づる式に増えていき、戦力がどんどん削がれていきました。

 ニュースで伝えてきた現実を身をもって感じながら、とにかく毎日の取材を回すことに必死でした。症状がなく自宅で待機している人にはオンラインレクやカメラマン取材の原稿化、ネタの仕込みなど、リモートワークで対応できる仕事を担ってもらい、効率化と気力で耐える状況が続きました。

感染はやや落ち着いたが、今後の観光需要は

 ゴールデンウィークに入ると、御柱祭は諏訪大社に向けて柱を運びながら町を練り歩く「里曳き」(5月3日~16日)を迎えました。この頃になると感染状況がやや落ち着いてきたため里曳きは通常通り人力による柱の曳行となり、氏子や住民からは「地域のみんなとできて幸せ」「これが諏訪の祭り」といった声が聞かれました。

人力による御柱祭里曳き

 ようやく普段に近い形での御柱祭ができましたが、祭り全体でみると観客は7万4千人余りで前回のわずか4.7%、参加した地元の氏子も前回の3分の1にとどまりました。祭り全体が否応なく盛り上がりを欠き、対策を徹底しているとはいえ祭りで感染が広がる可能性も排除できず、どういったスタンスで伝えれば良いか最後まで悩みました。

 そして、「三大祭り」の最後を飾ったのが、全国から善男善女がやってくる善光寺の御開帳です。新型コロナの影響で当初は参拝者の出足が伸び悩み、シャトルバスの利用者が前回の4分の1という時期もありましたが、感染が落ち着くにつれ、参道が人で埋まるようになりました。

 前立本尊と善の綱で結ばれ、触れるとご利益があるとされる「回向柱」には、閉幕が迫った6月下旬の週末には約2時間待ちの行列ができ、境内に通じる仲見世の店舗では「GWの2倍」という来店客数を記録しました。

御開帳回向柱の行列

 新型コロナに翻弄され続けてきた信州の観光ですが、6月10日には外国人観光客の受け入れが再開されるなど、国は経済活動に軸足を移しつつあります。

 長野県では、2019年には外国人観光客の述べ宿泊者数が157万人を超えましたが、去年はわずか6万人と2019年の4%にまで激減しました。苦境に耐えてきた県内の観光関係者からも水際対策の緩和を歓迎する声が上がっています。国内旅行者が増えてきているとは言え、外国人観光客が行き交う様子が再び見られてこそ、信州観光が日常に戻ったと言えます。

 新型コロナ、そして物価高と、次から次へと課題に直面し、事象の切り取り方に悩むケースも増えています。こうした状況の時こそどうマクロとミクロの視点を併せ持つことができるか、問題の本質を捉えることができるか、私たち自身も試され、鍛えられながらニュースと向き合う日々が続いています。

<執筆者略歴>
池野 真史 (いけの・まさふみ)
1982年生まれ、2004年信越放送に入社し報道部配属。
スポーツ担当、県警記者クラブ、制作部ディレクター、報道部長野市政遊軍、県政記者クラブを経て
2015年6月~松本放送局で御嶽山噴火災害などを継続取材。
2020年3月~本社でデスク。
JNNとの関わりでは2012年4月JNN三陸支局に駐在。
2012年9月「夢の扉+」制作。

<主なドキュメンタリー番組>
「ふるさとの行方 県北部地震半年の記録」(15年)
「鎮魂と復興~御嶽山噴火災害から1年~」(15年)
「夫、待つ頂へ 御嶽山噴火4年 新たな歩み」(18年)

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chousa@tbs-mri.co.jp


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