2021年度下半期ドラマ座談会前半(10月クール)
【2021年度下半期のドラマについて、メディア論を専門とする研究者、ドラマに強いフリーライター、新聞社学芸部の放送担当記者の3名が熱く語る】
影山 貴彦(同志社女子大学教授)
田幸 和歌子(フリーライター)
倉田 陶子(毎日新聞記者)
まず「最愛」を語りたい!
編集部 10月期のドラマから、お話を頂戴できればと思います。
田幸 10月期のドラマを語る上で絶対外せないのが、「最愛」(TBS/TBSスパークル)です。
影山 ですよね。
田幸 作品単体のクオリティーの高さはもちろんですが、ドラマ業界全体において、すごく大きな鉱脈につながるところがあると感じました。
昔と違って、一話完結ではない、しっかり練られたドラマを見たい人が、すごくふえていると思います。中でも、ミステリーを見たい人は相当多いですよね。ふだんあまりドラマを見ない人でも、ミステリーは見たいという人がたくさんいます。
しかし、例えば東野圭吾さん原作のものはやり尽くしたなど、これといった原作が必ずしもたくさんはない。原作のない、オリジナルの脚本を書ける人があまりいないということも指摘されてきました。その状況の中で「最愛」は、オリジナル脚本でこれだけ当てた。これは今後のドラマ界にとって、大きい影響があると思います。
あとは、局のつくり方のうまさで、脚本家、演出家、プロデューサーがチームを組んで、安定した高いクオリティーを保っています。「アンナチュラル」(TBS/ドリマックス・テレビジョン)や「MIU404」(TBS/TBSスパークル)を手掛けた野木亜紀子さん、塚原あゆ子さん、新井順子さんのチームがまさにそうなんですけど、その抜群の信頼感あるチームが出来上がっているところに、さらに今回は、奥寺佐渡子さん・清水友佳子さんと塚原あゆ子さん、新井順子さんのチームが新たな境地を見せてくれました。
このチームは、「Nのために」「リバース」「夜行観覧車」(いずれもTBS/ドリマックス・テレビジョン)と、湊かなえさん原作のドラマをヒットさせてきました。湊かなえ作品のようなテイストのものをずっと見たい層が一定数いるわけですが、湊さんがずっと原作を提供してくれるかというと、そこはやはり限界があります。その点で、湊かなえさん的な作品をオリジナルドラマでも作れる、というチーム力を見せてくれたので、今後もすごく楽しみです。
倉田 原作物でない点を評価するのは、私もすごく共感します。
原作ありきだと、それを自分が読んでいたりすると、先が見えてしまうとか、原作と比較して、ここが違う、あそこが違うと、すごく些末なことをついつい気にしてしまうんです。なので、原作物ではないというだけで、私の中で、まずポイントが高いです。
原作物ではないのに、俳優さん、スタッフさんたちの努力がこれだけうまくはまって、実って、視聴者を強く引きつける作品ができるというのは、逆にほかのドラマでもそういうものが見たい、という気持ちにもさせられました。
影山 お二人がおっしゃったとおり、オリジナルという点は大きいですね。やっぱりオリジナルを視聴者は求めている。
それから、「一話完結じゃないと、テレビ離れしている視聴者は引きとめられない」とテレビマンは勝手に思っているようですけれど、本当に面白いドラマは、見ている側が飢餓感を覚えるぐらいに、「どうなるの? どうなるの?」と、すごく続けて見たいわけですよね。
今のテレビは、いろいろなものが充実していて、視聴者が何を求めているか、あらかじめリサーチをかけて、こうだ、こうだと言うんですが、そのリサーチでは、視聴者が本当に求めていることはわからないのではないかと、ここ数年思うことが多いです。
「チーム」というキーワードも出ました。他には磯山晶さんと宮藤官九郎さんのタッグが有名ですね。磯山さんは、宮藤官九郎さんを発掘した人であって、磯山さんがいて、タッグを組んで作品をつくることができる。局を代表するつくり手がTBSにはちゃんと育っているなと思います。
クドカンさんはもちろんフリーですけれど、そういう名物ドラママン、テレビマンが、逆に言うと少なくなりつつある現在だからこそ、存在感のあるスタッフが結集したチームの力で優れたドラマが生まれているという感じがします。
「最愛」についてばかり言ってはいけませんが、ヒロインの吉高由里子さんについても話したいですね。彼女のすばらしさは、コメディエンヌであり、そしてシリアスなものもできる、シリアスなものをやっても、持ち前の明るさで、ズシンと重くなり過ぎない。非常にすっきりと感じられる気がします。
普通ならコメディエンヌというか、コマーシャルで、サントリーのハイボールの、ああいうウェーイみたいな色がつき切っちゃうと、その後の展開が苦しくなるものなんですけど、全然尾を引かないというか、どっちもしっかりと、両方グッと立つというすばらしさですね。
女性制作者の存在感
編集部 「最愛」に関して申しますと、今までテレビドラマの世界で、名前が前面に出る女性ディレクターというのは、あまりいませんでした。これほどみんなが、「あっ、あの人の作品ね」という女性ディレクターは、塚原さんが初めてだと思います。特に、このチームは女性でまとまっている。そこが新しいのではないかと思いますが、いかがでしょう。
田幸 まさしくそう思います。
影山先生がおっしゃるように、クドカンさんを発掘した磯山さんがいて、脚本家の野木亜紀子さんも、最初はフジテレビのヤングシナリオ大賞で発掘された方ですが、「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」「MIU404」などTBSで、最初は「空飛ぶ広報室」「逃げ恥(新春スペシャル)」で磯山さんと組み、その後、若手プロデューサーの新井順子さんと組んで、新井さんにバトンタッチしていった。
いい脚本家さんをリレーするような形になり、脚本家、演出家のほうが、プロデューサー、若手を育てたところもある。そういうバトンタッチがこんなにうまくいっている局は、なかなかない。すごいシステムができているなと思います。
倉田 やはり皆さん女性というのは、裏でいろんなアイデアを出すときにもしゃべりやすいのかなと思います
男性がいない空間で、女性だけが固まっているときの方が、いろいろアイデアを言いやすいというのは、自分の仕事を振り返ってもあります。今まで男性社会だったところに女性が加わって、女同士いろいろ言い合うことで新しい発想が生まれているのかなと感じます。
影山 大学での教え子が、名指しで「先生、私、将来は新井順子さんみたいになりたいです」と言いますもんね。メディア学科ということはもちろんあるんですけど、新井順子という名前をパッと出す。
時代が流れているなという気がします。魅力的なドラマをつくる上で女性がこれだけ活躍していて、とても多くの面白い作品、エンターテインメントに女性がおおぜいかかわっている。「最愛」はその代表でしたね。
近所にほしい「スナックキズツキ」
倉田 あと、10月期だと、「スナックキズツキ」(テレビ東京/ホリプロ)。
田幸 ああ、いいですね。
影山 僕も出ると思いました。
倉田 このスナックが近所にあってほしいと、みんな思ったと思うんです。忙しさにかまけて、自分自身、人に対して配慮がなくなっている時があることは自覚としてあるんですね。
一方で、相手にそんな気がないのはわかっているけど、ちょっとした一言に傷つくことも日々ある。そういうときに、例えば同僚に相談したくても、コロナ禍で、リモートワークで直接話せないとか、そういうストレスがたまっている中で、こんなママがいるスナックに行きたい。
登場人物たちがこの「スナックキズツキ」にたどり着いて、ママとやりとりしたり、ちょっと歌ったりとか、いろんなことをして、一つ荷物をおろした状態で、自分の日常に戻っていく。その姿が、自分も傷ついたときとか、ちょっとしんどいときは、こういうことをすればまた元気になれるかなという、生きる上でのヒントももらったような気がして、毎回欠かさず、幸せな気持ちで見ていました。
田幸 本当に小さな一言で意外と傷ついたりする。そんな大きな、ドラマチックな悲劇ではなくて、日常の中でモヤモヤっとすることがたまっていることって、誰にもありますよね。
この作品は、ちょっとステキなママがいて、美味しいものが出てという、テレビ東京お得意の「癒やしドラマ」かと思いきや、かなり刺さってくる面がありました。傷つき、傷つけの人たちが、一話完結の体裁を取りながらもリレー方式になっている。これがすごく新しい。傷ついた人が、実は別の人を傷つけている。これってすごくあることで、見ている人全てが、自分がドラマの当事者なんだという意識になるのではないかと思います。
ママを演じた原田知世さんは、不思議な女優さんなんですよね。年齢を感じさせないし、生身感もない、現実離れした、ふわふわした妖精のようで。あの重力のなさってすごい。
せりふの口調でいうと、このママは割とズバッと物を言うんですよね。「あんた、〇〇かい」みたいな感じですが、あんなやわらかな口調で「あんた」と言う人を初めて見ました。
影山 僕は、毎日新聞の大阪本社版でコラムを連載していて、早々に「スナックキズツキ」について書いたんですけど、毎日新聞のデスクがつけてくれた見出しが「心の目盛りがちょっとプラスに」だったのです。僕は「ささやかな桃源郷」と書いたのですが、お二人がおっしゃったように、大層ではないのですね。ちょっといい感じになる。
僕はもともと大上段で構えたようなドラマが、あまり得意ではなくて、「スナックキズツキ」みたいなささやかな感じがとてもいいなと思います。
自分が傷つけられたという被害者意識だけでいるけれど、実は自分も人を傷つけているんだよという、あの価値観というのか、持っていき方が今だなと思うんです。誰も悪くないというか。一昔二昔前だったら、黒白つけたがる登場人物も多かったですけど、あの人も傷ついているんだ、あの人も傷つけているんだというのがいいです。
原田知世さんは、若いころはそんなに興味なかったけど、今の原田さんはとてもいい感じですよね。
編集部 原田知世さんはもちろん有名な女優さんですが、あそこで原田知世さんというのは、誰か見抜いた人がいたのかと感心しました。
田幸 NHK朝ドラの「半分、青い。」で、佐藤健さんの母親である和子さんの役をなさった。あのお母さん像がヒントになっているところがあると思います。
影山 ああ、そうですね。あのお母さん、よかったですよね。
ぞんざいとは言えないけれども、スナックのママなんだから、もっとお客に丁寧にしゃべるかと思いきやといった感じですが、年上の方、丘みつ子さんに対するときには丁寧なんですね。あの辺をちゃんとわかっている。グっと距離を詰めるというのが嫌じゃないというか。毎回いろんな小道具を出してきて。歌を歌うとか、いろんなことをやる。あのストーリーもすばらしかったですね。
田幸 次、何をやるんだろうみたいな楽しさもありましたね。
メディア業界が描かれた「和田家の男たち」
編集部 10月、ほかにいかがでしょうか。
影山 僕は「和田家の男たち」(テレビ朝日/MMJ)を挙げたいです。大石静さんです。割と遅めの時間でしたけれど、新聞記者、テレビマン、そしてネットのライターが親子三代で主人公でした。やはりテレビ局がつくるので、ネットのライターに対して、揶揄している。ネット方面の方々はちょっと腹が立ったのではないかなと思わなくもなかった。
でも、大石静さんのキャリアをもってして、新しいところにもちゃんとアンテナを張っていらっしゃるのがすごいと思います。若干のステレオタイプ的な表現はあったにせよ、三代の職業の特色、そしてそれぞれの生き方、生きざまを描く。そうかと思うと、小池栄子さんにまつわるミステリーな要素もあって、すばらしいドラマだと思いました。
三代のおじいちゃんとお父さんを演じられたお二人(段田安則と佐々木蔵之介)は、そんなに実年齢が離れていないのに、俳優って何とすばらしいんだろうと。見事にあれがおじいちゃんとお父さんになっているというところに感心、感動しました。(段田さんは1957年生、佐々木さんは1968年生)
倉田 新聞社で働いている身として、新聞とテレビとネットという、いろいろなメディアの世界が描かれていること自体がすごく興味深かったです。
新聞社も今、記事の速報性がすごく求められていて、ネット媒体と戦わなきゃいけない局面もあります。新聞社から見たネットメディアって、ドラマでも描かれたように、ちょっと揶揄するような見方をする人も、上司の中にはまだまだいますけれど、私たち世代は、「完全にライバルでしょう」という考えでいます。
その人たちが、ドラマとはいえ、どんなことを考えているのか、すごく興味があったので、勉強になったというのはドラマに対して正しい言い方じゃないかもしれないですが、勉強しよう、みたいな視線でも私は見ていました。
田幸 もっと話題になって、もっと注目されてほしい作品だと思いました。
影山 そうなんですよ。
田幸 序盤が楽しい、コミカルな掛け合いで、そういうドタバタコメディーなのかなと思って見ていたら、途中からすごくシリアスになった。小池栄子さん演じるお母さんの死の真相を追う展開になってきて、そこからまたグッと面白くなった。それが最初のころになかなかわからなくて、脱落してしまった人がいるのではないでしょうか。もったいないなと感じます。
それから、大石静さんってすごくうまいなと、今更ながら改めて思いました。大石さんが脚本を書いた「知らなくていいコト」(日本テレビ)でもジャーナリズムの抵抗みたいなところをかなりシリアスに描いていましたが、一方「和田家」はシリアスな展開になっても、必ず笑いは忘れず、最後まで明るくやっていた。そのあたりのバランスもいいと感じました。
段田さんと佐々木蔵之介さんという達者な役者さん同士の掛け合いは安定感があります。その関係性の中に、相葉くんをちょっと頼りない子として入れた、そのバランスもよかった。その相葉くんが、弱く、頼りないなりに成長していったり、彼が入ったことで、家族になっていく感じ、家族がつくられていくさまみたいなところもよかったと思います。
影山 相葉くん自身が、段田さんと佐々木さんの名優二人に学んだこともすごく多かっただろうと思うし、彼が、うまくてしようがないというか、俳優一筋ですみたいな人だとこっちも息が詰まる。だから、緊張感とそれを緩めるやわらかい部分というバランスがよかった。
僕はいつも学生に、「テレビドラマは3回目まで見んとわからんで」と言っているんです。初回だけ見てあれこれと論評すると、大体よく外していますよね。そこからすごくくだらなくなったり、面白くなったりする。
ネット社会ですから、「早く出したもん勝ち」みたいなところがあるけれど、じっくりドラマを見ることも大事なんです。そういった意味で、見れば見るほど味が出てきたドラマだったという気がします。
倉田さんは新聞社で働いていて、勉強になったとおっしゃったけど、デフォルメは特段、気にならなかったですか。
倉田 そこはドラマなので、と思います。もちろん、ここはちょっと違うよなという部分もあるのですけれど、エンターテインメントですから。
影山 そうですよね、見る側にゆとりが欲しいですよね。あそこが違う、ここが違うという人たちが今とても多いじゃないですか。
テレビ局についても、あんなにデフォルメされた世界ではないですよね。報道マンはあんなにお気楽じゃない。だけど、あれを見て、またテレビを目指す学生たちが出てくる。そうしたら、それはそれでエンターテインメントでいいわけです。
目くじらを立てるのではなく、「エンターテインメントの中にまた本質がある」というのも、よく言っている話なんです。すばらしいドラマでした。大石静、恐るべしという感じです。
柳楽優弥が光った「二月の勝者」
倉田 「二月の勝者」(日本テレビ)が面白かったです。私は子どもがいなくて、受験というテーマに何の興味も持たずに見始めたんですけれど、柳楽優弥さん演じるキャラクターが魅力的だったので、3話ぐらいまでトントンと見ました。
12歳で、人生のとても大きな分かれ目に立たされるわけですよね。私は中学受験していないのでわからないところはありましたが、今の子どもたちの置かれている、ちょっと過酷な部分に思いを馳せました。最初あまり期待していなかった分、いろいろ学びがあった作品かなと感じます。
田幸 私も、柳楽さんがやっぱりうまいなというところで見ました。
影山 うまいですよね。
田幸 子どもたちもうまかったですね。そこも大きな収穫だと思います。
影山 時代がものすごく違うけれども、本当に、どれだけさかのぼるねんという感じですけど、「熱中時代」とか、「女王の教室」も子役がうまかった。どちらも日本テレビですね。小学生を集めて、というのがうまいのかな。
ただ、最後までもっとクールでいてほしかったという感じもあります。柳楽君だけに、通してほしかった。テレビのドラマだからということもあるかもしれませんが。「合格のために必要なのは父親の経済力。そして、母親の狂気。塾講師は教育者ではなく、サービス業」とか、そんなことを言い放って、おお、そこまでいくのかと思いきや、割と人情味豊かという感じになりましたね。まあ、でも、柳楽君は輝いていたという感じでしょうか。
気になった俳優は
編集部 途中で何人かお名前が出ましたけれども、個々の作品をはなれて、気になった俳優さんがいらっしゃれば。
田幸 まず、影山さんがおっしゃった吉高由里子さん。コメディーもできる方だからこそ、重くなり過ぎない。「最愛」もそうですし、「わたし、定時で帰ります。」(TBS/TBSスパークル)も、シリアスな物語の真ん中にいることで、いい感じの明るさ、輝きみたいなのが付与される。あと、ミステリーに湿度みたいなものを与えてくれるところもありますね。吉高さんは、すごくいい。
スイッチの入り方も、インタビューで共演者の方々がおっしゃっていましたけど、直前まで笑い転げていたりするところから急に役に入れる女優さん。「最愛」でも、松下洸平さんとのシーンで、急にやわらかになったり、幼なじみの空気感になる。いろんな演出をしなくても、役者さんの芝居だけで空気感が変わるって、すごいなと思いました。
あと、「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」の杉野遥亮さん。作品そのものもよかったですし、杉咲花さんはすでに若手のトップクラスにいますが、杉野遙亮さんに存在感がありました。もともと良い演技をしていたのですが、クセのない、きれいな顔の方なので、あまり脚光を浴びてきませんでした。もったいないなと思っていましたが、この「白杖ガール」でようやくブレイクが来た感じです。
「直ちゃんは小学三年生」(テレビ東京/ラインバック)「東京怪奇酒」(テレビ東京)で2作連続主演を務めるなど、テレビ東京さんが種まきして、水をあげて育ててきたものを、うまく日本テレビさんが持っていった感じもありますね。
あと、段田安則さんがうまいのはもちろん分かっているんですけれど、朝ドラの「カムカムエヴリバディ」で見て、さらに「和田家」で見て、同時期に、全く違う親父像を演じられていたのが凄いと思いました。
段田さんはかつて連続ドラマ出演記録があったと思うんですが、2010年代以降連ドラ出演の頻度を減らしていた印象があったので、段田さんが連ドラに戻ってきたことは、ドラマ好きにとって収穫だと思います。
倉田 私は、「東京放置食堂」(テレビ東京/共同テレビ)の片桐はいりさん。
影山 言われたー!
倉田 これが連ドラの初主演なんですね。
影山 みたいですね。
倉田 そのことにもびっくりはしたんですけれど、あれだけ脇で個性が強くて、キャラが強烈な方がメインに立つと、ドラマ全体のバランスってどうなるんだろうと思っていたんです。
俳優さんだから、演技力があって当たり前ですけれども、そこをちゃんとコントロールされている。ああ、やっぱりプロの俳優って、こういうことなんだというのを見せてもらいました。そして、唯一無二の存在感が、それでも消えないというところに、すごさを強く感じました。
倉田 また「最愛」になっちゃうんですけど、松下洸平さんはすばらしかった。
影山 そうですね。彼は言っておかないと駄目ですね。
倉田 朝ドラ「スカーレット」で『八郎沼』という現象を生み出してから、その後、民放の連ドラに次々と出ています。朝ドラで注目されたから起用されたんだろうみたいな見方をする方もいると思うんですが、舞台での経験も積んでいて、しっかり松下洸平としての演技を持っている方だと思います。
表情のつくり方ももちろんそうですけれど、声のトーンとか出し方一つとっても、吉高さんと対峙しているときと、ほかの役と対峙しているときで変わってくる。本当にすてきな俳優さんだと感じました。
影山 僕は、お二人に言われちゃったので、悔しいから、変化球で言います。「スナックキズツキ」の浜野謙太さん。酒屋さんの役なんですけど、あれは味がありましたね。
「1月クールのドラマその他」へ続く(4月4日公開予定)
<座談会参加者紹介>
影山 貴彦(かげやま・たかひこ)
同志社女子大学メディア創造学科教授 コラムニスト
毎日放送(MBS)プロデューサーを経て現職
朝日放送ラジオ番組審議会委員長
日本笑い学会理事
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」など
田幸 和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経て、フリーランスのライターに。役者など著名人インタビューを雑誌、web媒体で行うほか、『日経XWoman ARIA』での連載ほか、テレビ関連のコラムを執筆。Yahoo!のエンタメ個人オーサー・公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『脚本家・野木亜紀子の時代』(共著/blueprint)など。
倉田 陶子(くらた・とうこ)
2005年、毎日新聞入社。千葉支局、東京本社生活報道部などを経て、現在、大阪本社学芸部で放送・映画・音楽を担当。
<この座談会は2022年2月16日に行われたものです>
この記事に関するご意見等は下記にお寄せ下さい。
chousa@tbs-mri.co.jp