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<シリーズ SDGsの実践者たち>第12回  太陽光パネル大量廃棄時代の解決策は

調査情報デジタル

【太陽光発電には、パネルの廃棄方法という大きな課題が立ちはだかる。単なるゴミになってしまっては環境的に本末転倒だ。太陽光パネルのリサイクルの最前線を取材した】

「調査情報デジタル」編集部

 2億4000万枚-これは2019年時点で国内にあると推計されている、太陽光発電用パネルの枚数だ。発電容量は5901万kwにのぼる。

 パネルの数はこれからまだまだ増えていく。国が温室効果ガス排出量を2013年度に比べて46%削減することを前提にして2030年度のエネルギー需給の見通しを立てており、太陽光発電の更なる拡大が必要とされているからだ。

 その際に懸念されるのは、太陽光パネルの廃棄の問題だ。パネルの寿命は20年から30年とされ、使用済みのパネルは産業廃棄物として扱われる。今はまだわずかしかない廃棄パネルの排出量が、2040年前後には年間80万トンに膨らむ見通しだ。

 この大量廃棄時代を見据え、国内では太陽光パネルのリサイクル処理技術の開発が進められている。福岡県北九州市では、99%以上のリサイクルを可能にする新たな処理施設が2023年4月に稼働する見通しとなった。将来の課題解決を目指す最先端のリサイクル技術を取材した。

10年以上かけてリサイクル技術を開発

太陽光発電(PV)パネルのリサイクルを進めている工場は、環境・リサイクル産業に取り組む企業や研究機関が集積する北九州エコタウンにある。カーボンファイバーやセラミックスなどのリサイクル事業を手がけている新菱と、子会社のリサイクルテックが2019年に作ったPVR工場だ。

リサイクルテックPVR工場

 この工場で受け入れている廃棄パネルの量は、2019年が3427枚で重さが55トン、2020年が6636枚で100トン、そして2021年が1万3000枚で200トンと、毎年倍増している。

処理される前の廃棄太陽光パネル
処理される前の廃棄太陽光パネル

 使用済みの太陽光パネルは産業廃棄物として扱われている。一般的にはアルミ枠を取り除いたうえで破砕され、埋め立て処分される。リサイクルテックでは現在、アルミ枠を解体し、そのほかの部分を破砕した上で、道路の下に敷き詰められる路盤材にする方法でリサイクルしている。

太陽光パネルを破砕する機械

 その一方で、新菱では100%に近いリサイクルができる処理方法を2010年から研究してきた。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や、環境省の支援を受けながら10年以上をかけて開発したのが、熱分解方式と呼ばれる処理方法だ。

 まず、プラントの炉に、太陽光パネルをそのまま入れる。パネルの内部は、強化ガラスやアルミ枠のほか、太陽電池セル、配線、バックシートなどが、エチレンビニルアセテート(EVA)樹脂によって固められている。

 炉の内部で加熱することで、EVA樹脂が分解される。すると、すべての部品をそのままの形で取り出すことができるのだ。

加熱処理されたパネル(左)と太陽光パネル(右)
実証に使われたプラント

 さらに、EVA樹脂の熱分解で発生したガスを、炉の加熱源として使うことで、サーマルリサイクルも実現している。実証用のプラントで1万枚を処理して、この技術を確立した。

99%以上のリサイクルを可能にした選別技術

 ただ、この時点でのリサイクル率は95%に止まる。残された課題は、ガラスが割れているか、もしくはひびが入ったパネルを熱処理した場合、ガラスが細かく割れてシリコンセルや銅線などと混ざってしまうことだった。この状態では素材ごとの回収ができなくなる。

ガラスが割れたパネルの熱処理後

 そこで新菱では、素材を高度に選別する技術を早稲田大学理工学術院の大和田秀二教授と共同研究した。取り出した銅線とシリコンセルを、有価物として金属リサイクルできる装置を開発。純度が高い状態で取り出したガラスは、断熱材のグラスウールにリサイクルできるようになり、99%以上のリサイクルを実現した。

リサイクルされたグラスウール

 熱処理方式のプラントと高度選別装置によるリサイクルは、廃棄物を出さないうえ、二酸化炭素の削減にもつながる。1MWのメガソーラーを処理した場合、約200トンもの二酸化炭素を削減する効果があるという。新菱とリサイクルテックでは2023年4月からの稼働に向けて準備を進めている。

リサイクルされるために必要なことは

 太陽光パネルをリサイクルする方法は、熱処理方式、ホットナイフ方式、ブラスト方式、ロール式破砕機方式などが現在開発されている。実用化が進むことで、大量廃棄時代を迎えた時にはリサイクルの受け入れ体制も整うだろう。

 しかし、重要なのは廃棄されたパネルが本当にリサイクルに出されるかどうかだ。処分のコストは現状では埋め立てが最も安い。処分費用を安く抑えるため、パネルが埋め立てにまわされる可能性は残る。クリーンなエネルギーを作る太陽光発電が大量のゴミになるのでは本末転倒で、しかも受け入れる処分場も足りなくなる。

 新菱では、熱処理方式は「埋め立てにひけを取らない費用でリサイクルできる」として、リサイクルに理解を得られるよう呼びかけていく。その一方で、家電や自動車のリサイクルのような法整備によって、発電事業者がリサイクル費用を負担する仕組みづくりも、検討する余地があるのではないだろうか。

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