視聴者の声~時代を反映する様々な声
村田典子(TBSテレビ視聴者サービス部)
視聴者からのご意見はいつも時代を反映している。
例えば、朝や夕方の時間帯。テレビをつけながら、出かける準備や家事をしている方も多いだろう。いわゆる“ながら視聴”が多いと思われる時間帯なので、英語のインタビューなどは吹替で放送するのが基本だった。
しかし、最近は吹替ではなく「英語のまま聞きたい」というご意見をよくいただく。英語ができる人が増えてきたということもあるし、SNSやネットなどでは海外の動画やインタビューなどをいつも目にしているので、その方が自然、むしろ吹替は不自然な印象があったり、フェイク感があると感じるのかもしれない。その人自身の声が聞きたい、という欲求もあるだろう。
時と共にその使い方や意味、言い方なども変化する「言葉」に関するご意見も多い。中でも考えさせられたのが、ゲストが言った「“ペットに餌をあげる”は間違いではないか?」というもの。
確かに正しくは「餌をやる」や「与える」だ。別の日には「ペットの餌ではなくて、ごはんと言ってください」というご意見もあった。ペットが家族の一員となり、より身近な存在になった今、「餌を与える」より「ご飯をあげる」のほうがしっくりくることもあるだろう。
同様に「ペットが死ぬ」ではなく「亡くなる」と言って欲しいというご意見もある。文法か心情か。これらの言葉の問題は、時と共に変わりゆく人々の生活様式や心のあり方が反映されている。
TBSの夏の恒例番組と言えば「音楽の日」だ。今年で12年め、今回も有難いことに、好意的なご意見を沢山頂いた。
「『音楽の日』は当初から一貫して変わらず、テーマ性があるのがいいです」、「番組のラストにMONGOL800の『琉球愛歌』を持ってくるところにグッときました。武力を使わず自然を愛する・・・番組からのメッセージ、しっかりと受け止めました」
今回の番組のテーマは「メッセージ~届けたい歌~」だった。「琉球愛歌」に関しては、沖縄在住の方からは「今回 この曲を通して、⽇本全国で沖縄の状況をほんの少しでも考えてくれるきっかけになったのでは。ありがとうございます」というご意見も頂いた。
また、40代の女性からは「若い世代の知らない曲も『こんな良い曲歌ってるんだ!』と思えるような素敵な企画でした。テレビ局側と視聴者側の温度差を感じない⼀体感のある番組は久しぶりで、番組終了後に自然と拍手をし”あぁ昔ってテレビを見た後、見ている時、こんな感覚だったよね”と主人と話が弾みました」とテレビの前のご家族の姿が浮かぶような感想も届いた。
今年は「世界陸上オレゴン」の夏でもあった。25年間MCをつとめていただいてきた織田裕二さんと中井美穂さんは今回が最後の世陸になると事前に発表されていた。
二人が選手について詳細に調べていることや、陸上愛にあふれる名MCぶりは好評で、激励とともに最後のMCとなることを惜しむ声も多かった。
出演者やスタッフは期間中は時差などもあり大変だが、視聴者からのご意見に励まされることも多い。同時にご指摘があればすぐに対処し、可能な限り早いタイミングで放送にいかすのは当然だ。
安倍元首相が銃撃された際の映像に関しても、ネットでは直ぐに個人が撮った様々な映像がアップされたが、各放送局は何をどこまで見せるのかを、様々な観点から考える。そのなかには勿論、視聴者のご意見も入っている。
最近は政教分離に関してもっと知りたいというご意見も多く届く。一方、20代の視聴者からは、例えば、日本ハム球団が応援に取り入れたことで、動画サイトなどでバズっている「きつねダンス」に関して「音楽番組で取り上げてほしいです。ダンスが上手いアーティストにぜひ踊ってほしい」といった声も届く。
年代や個性が違えばテレビを通じて喚起される思いも様々だ。どんなご意見もこぼれ落ちることなく受け止めていくこともまた多様性の時代を生きる証のような気がする今日この頃である。
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