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視聴者の声~大谷翔平選手のpillow

【大谷翔平選手をめぐる、あるグッズの呼び方が・・・】

村田 典子(TBSテレビ視聴者サービス部)

視聴者の声からの気づき 大谷翔平選手のpillowで眠れない

 日によって600~1000ほどTBSに届く視聴者からの声、メールや電話でのご意見、ご指摘に大きな気づきを得ることは多いと改めて実感する毎日。苦言も含めて視聴者がTBSに期待してくれているということの証だと考えると有難いかぎりです。

 7月前半、日米を沸かせていたのは、大谷翔平選手の二刀流の活躍。
 プレーは勿論のこと、礼儀正しい振る舞いや、多彩な表情が可愛いなどと注目が集まり、通常はあまり野球に興味の無い視聴者までをも虜にしました。
 そんななか迎えた7月5日、彼の27歳の誕生日。この日はスタジアム来場者に先着順に大谷選手をフィーチャーしたプレゼントが配られるということで開場前から現地のファンが大行列。日本のニュースや情報番組でも連日取り上げられたこの来場者プレゼントの名前は「Ohtani Pillow 」。彼の顔が片面に「6顔」ずつプリントされた物でした。

 皆さん、このプレゼント、何に見えましたか?

 日本の多くの番組では「枕」とナレーションやテロップなどで紹介されていました。しかしよく見ると形はほぼ正方形、長方形がスタンダードな枕とは少々かけ離れたルックスに違和感を覚えた方もいらしたのではないでしょうか?
 そこに、視聴者からもご指摘が。「あれは枕じゃなくてクッションですよね?アメリカではクッションのこともpillowと言いますよ」
 実はアメリカで友人宅を訪ねた際、そう言っていた記憶もあり、いざ検証です。

 「pillow」をネット辞書や翻訳機で調べるとほとんどは「枕」と出てきます。英英辞書で調べてみてやっと、北米ではソファなどで使うクッションの意味もあると出てくるものがあります。
 では、なぜ「Ohtani Cushion」ではなかったのでしょうか?
 ここで知人であるパックンことパトリック・ハーラン氏にメール。すると「英語でcushionというとお尻の下に敷く物というイメージかもしれないですね」と返ってきました。なるほど。日本では座布団のようにお尻の下に敷く物も、ソファに飾りのように置く物も大きなくくりで「クッション」と呼びますが、アメリカでは「cushion」と「pillow」でちょっと意味合いが違うようです。
 となるとあの大谷選手のpillowは、視聴者のご指摘通り、日本語で紹介するなら「枕」ではなくて「クッション」と紹介するのが妥当ではないか?という思いが沸き上がってきます。かつて英語の授業で「pillow=枕」と習いましたが、その言葉が実際に英語圏(今回はアメリカ)でどのように使われているのかまでを知らないと的確に訳す事は難しい。当たり前と思っても確認してみる。違和感があったら調べてみる。これぞ取材の基本と改めて実感。「pillow」という簡単な英単語一つをとってもその背景や実用例を知らないと訳し方が違ってくるという顕著な例でした。

 しかし、ここでまたモヤモヤがひとつ。現地のファンが「pillow」と呼んでいる映像を映しながら、「クッション」という日本語のテロップを出すと、今度は視聴者から「枕ですよね」とご指摘があるかもしれないと。うーん、枕なのかクッションなのか?悩み始めるとなんだか眠れなくなりそう・・・

 次の日、ママ友達とLINEでトーク中にこの「Ohtani Pillow」の話題に。「アメリカでは、pillowってソファのクッションのことよね」と発言したのはアメリカ赴任歴のあるママ。やはり!あれはクッションなのだと改めて確信した次の瞬間、別のママが可愛いスタンプと共に発言。「アメリカ全土がクッションとして使っても、私は断固、抱き枕にするわよ♥」。枕は枕でも抱き枕。案外それが正解なのかもしれません。

<執筆者略歴>
村田 典子(むらた・のりこ)
1965年生、1989年TBS入社、
ラジオニュース、ラジオ制作、情報番組プロデューサー、宣伝部長などを経て現在、視聴者サービス部長

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