「新型コロナ」現場の声を届けたい! ~福岡からの報告
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「新型コロナ」現場の声を届けたい! ~福岡からの報告

【誰かの役に立つコロナ報道を。福岡の放送局が伝えた医療廃棄物処理業者や医師の苦闘と、その報道がもたらしたもの】

竹島史浩(RKB毎日放送 報道局長)

役に立つ報道とは?

 2020年1月、日本国内で初めてとなる新型コロナウイルスの感染者が神奈川県で確認された。およそ1か月後の2月20日には福岡市で新型コロナウイルスの感染者を確認。福岡県、九州で初めての感染者だった。
 国内で感染者が確認されてから約1年9か月。「新型コロナに関する情報を1日も休むことなく地域の皆さんに届け続けること」という一点を全スタッフで共有し、放送を続けている。新規感染者数の確認、医療機関の逼迫、社会・経済活動への影響、専門家の分析・・・取りあげるテーマは多岐にわたる。
 その一方で誰かの役に立ったり、何かを後押ししたりする報道ができているのか?自問自答する日々が今も続いている。

切り札は「ワクチン」

 今年6月、菅首相(当時)は党首討論の場で「国民の皆さんの接種に必要なワクチンは既に確保している、ワクチン接種こそが切り札だ」と強調。東京オリンピックの開催を控え、その後も「ワクチンは切り札」という発言を繰り返した。
 東京オリンピック・パラリンピックは本当に開催出来るのか?感染防止とオリパラ開催は両立できるのか?期待と不安・疑念が入り交じる国民の声は大きくなっていた。
 その頃、RKB報道部では「地域医療の危機」というシリーズ企画を展開していた。その中で取りあげた事例を紹介する。

11④ 画像②ワクチンの容器

【引き続き、<医療廃棄物処理業者の窮状>に続く】

ワクチン接種本格化の一方で・・・

 福岡県南部の中核都市・久留米市。今年5月、RKBは産業廃棄物処理業者を取材していた。様々な廃棄物の収集と運搬を行っていて、新型コロナウイルスの感染拡大とともに急激に増えていたのが使用済みの防護服やマスク・注射器などの「医療廃棄物」だった。
 業者の収集先に同行すると感染性廃棄物であることを示すバイオハザードマークが記された専用の段ボール箱が山積みとなっていた。医療機関やワクチンの集団接種会場などから出た廃棄物だ。業者は収集と運搬が終わると、そのまま車を消毒。消毒が終わると再び次の収集へ。感染するかもしれないという不安を抱えながら、毎日汗だくになって作業を続けていた。男性社長は「体力的・精神的な負担がこれ以上大きくなれば、医療廃棄物を安全に処理する担い手の確保がますます難しくなる」と言う。

11④ 画像③バイオハザードマークの段ボール

 この頃、福岡県内では医療従事者、そして高齢者を対象にワクチンの優先接種が行われていた。しかし、医療機関やワクチンの接種会場から出た廃棄物を処理する業者は、この時点で優先接種の対象となっていなかったのだ。「医療機関の従事者として、我々の業界にも優先接種というのを、国からお墨付きをいただけると助かる」社長はカメラの前で切実な訴えを口にする。この放送の後、久留米市が産業廃棄物処理業の従事者を優先接種の対象に加えることを決定した。
 当初、この会社では取材を受けることに否定的な意見が多かったという。廃棄物収集に当たる作業員や家族への“風評被害”を懸念してのことだった。放送後、社長からは「多くの温かい声をもらって嬉しい。自分たちの仕事を好意的に思ってくれている人がいることは励みになった」という言葉をいただいた。
 報道が行政を動かし、取材の成果が記者の励みにもつながったことは言うまでもない。
※この放送は、JNN月間賞(6月度)を受賞

ワクチンの無駄をなくしたい

 ワクチン接種に当たっていた医師の言葉も印象に残る。取材したのは9月。全国的にワクチン接種が進む一方で、若年層への接種をさらに進める必要性が叫ばれていた頃だ。「貴重なワクチンを無駄なく使うことが求められている」医師は、こう強調した。
 この医師が勤務する福岡市の病院では、ファイザー製のワクチンを接種していた。医師によると、1瓶分の原液に生理食塩水を加えた接種用の薬液は「2.25ミリリットル」。1人あたりに使う量は「0.3ミリリットル」なので、計算上は、7回取ったとしても余りが出る。新しいタイプの注射器を使えば、1瓶から7人分の接種が可能になる、と言う。

11④ 画像④7回打てる注射器

 新しい注射器は、ワクチンが入る筒の部分と針が直結していて、ワクチンを押し出すガスケットと呼ばれるゴムが針の付け根まで届く仕組み。医師は今年7月に初めて、この注射器を使用し、7人に接種できたという。
 その一方で医師は課題も指摘している。1瓶で7回打つことを希望する医療機関には、福岡市からワクチンとともに注射器が届けられる。その際、新タイプの注射器が届くこともあれば従来の注射器が届くこともある。「現状では接種希望者の予約を受け付ける際に、1瓶で6人分なのか?7人分なのか?決められない」というのだ。
 政府は遅くとも11月までに希望する国民全員へのワクチン接種を終えたいとしている。接種のスピードをさらに上げるために、新しい技術を効率よく活用したい。医療現場から発せられた本音だ。

現場の声を届けるために

 国内の全人口に占めるワクチンを接種した人の割合は、2021年10月中旬時点で、1回目を終えた人が約75%、2回目を終えた人は約66%となっている。さらに3回目の接種に向けた具体的な準備も進んでいる。当面、コロナと共存する生活が続いていくことは間違いない。
 私たちのくらしを支えるために最前線で戦っている人たちの声を丁寧に拾い上げる。その声を広く届ける。誰かの役に立つために・・・報道現場に立つスタッフ一丸となって取り組んでいく。

<執筆者略歴>
竹島史浩(たけしま・ふみひろ)1993年RKB毎日放送入社、2001年バンコク支局長、2013年報道部長
2017年報道制作局長、2019年から報道局長

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