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<シリーズ SDGsの実践者たち>第27回 環境に優しい都市への変革を進めるフランス・パリ

【2024年にオリンピック・パラリンピックが開催されるフランス・パリ。急速に進められているのが、環境に優しい都市への変革だ】

「調査情報デジタル」編集部

気候変動対策に貢献する世界初の大会

 パリでは来年開催されるオリンピック・パラリンピックに向けて準備が進められている。これまでの大会と異なるのは、気候変動対策に貢献する大会運営を目指していることだ。

 会場の95%は既存または仮設で対応するほか、施設の屋根を太陽光パネルで覆うなどあらゆる会場で再生可能エネルギーを活用。大会に関連する二酸化炭素の排出量を過去大会と比較して50%削減することを目指している。

建設が進められている競技会場 (2023年9月)
同じく建設が進められている選手村(2023年9月)

 オリンピックの開会式の会場は、パリの中心部を流れるセーヌ川。各国の選手団が船に乗ってパレードする。仮設の競技会場の多くは、エッフェル塔の隣に位置するシャン・ド・マルス公園やベルサイユ宮殿など、観光地や公共の広場に設置される。

五輪開会式はパリ中心部を流れるセーヌ川が会場
セーヌ川河畔に設置されたカウントダウンクロック

 ただ、パリで進められているのは、大会の準備だけではない。都市全体が大きく変わろうとしているのだ。

2030年までにヨーロッパで最も環境に優しい都市に

 パリでは2015年に国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開催され、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2度よりも低く保ち、1.5度に抑える努力をすることを掲げる「パリ協定」が採択された。この目標は、2015年に国連で採択されたSDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」にも盛り込まれた。

 フランスでは現在、積極的な気候変動対策が進められている。プラスチックの使用を禁止する法規制が打ち出されている現状は、前回の『ヨーロッパで加速する「脱プラ」の現状』で触れた。

 さらに、パリの気候変動対策がユニークなのは、都市の姿を変えようとしていることだ。パリ市内では2026年までに全域に17万本以上の木を植えて、2030年までに市内の50%を植林地で覆う目標を掲げている。

 同時に、多くの観光地でも公園の整備やさらなる緑化を進める。コンコルド広場から凱旋門まで続く並木道が美しいシャンゼリゼ大通りは、2030年までにさらなる緑化と庭園化を行う。自動車の車線を減らして、歩行者用道路と緑地を新たに作る計画だ。

さらなる緑化が行われるシャンゼリゼ大通り

 エッフェル塔の周辺や、コンコルド広場にも新たな公園が作られる予定で、パリは2030年までにヨーロッパで最も環境に優しい都市に生まれ変わる目標を掲げている。

自転車専用道路を整備し、自動車は規制へ

 環境に優しい都市を目指すにあたって、緑化とともに大きな施策となっているのが都市交通の改革だ。

自転車が行き交うパリ・ルヴォン通り

 多くの人が自転車で移動しているのは、ルーブル美術館の前を通るルヴォン通り。2020年に新型コロナウイルスの感染が拡大し、ロックダウンとなった際に、車の乗り入れを禁止して自転車専用道路が整備された。

 最初は仮設だったが恒久化が決まり、約50キロにわたって自転車専用道路が続く。この道路を含めて、パリの各地では自転車専用道路を180キロ整備する計画があるほか、自転車専用レーンは市内全域に張り巡らされている。

 あわせて、市内全域に安全な駐輪場を整備するとともに、盗難被害を防ぐために住宅地にも公共の駐輪場が整備されている。目指しているのは自転車と徒歩での移動が優先される都市だ。

 自転車専用道路の整備とともに、自動車への規制も予定されている。パリでは2024年までにディーゼル車の乗り入れが禁止されるほか、2030年にはガソリン車の乗り入れが禁止されることが決まった。

 フランスではエンジンの種類、登録した年、それに排出ガス量に応じた6色の排ガスレベル認定シールを車両に貼って分類する「クリテール」の制度が、パリをはじめとする主要都市で導入されている。パリでは「クリテール」レベルによって、中心部を通行する車を時間によって制限する制度も始まっていて、自動車への規制は気候変動対策の大きな柱と言える。

 こうした規制は次々と導入されている。パリ市長の政治主導による部分も大きいが、住民の意志を確認する機会もある。来年2月には、多目的スポーツ車のSUVを対象にした規制をめぐって住民投票が行われることになった。賛成多数が得られれば、SUVの駐車料金を引き上げて交通量を減らす方針だ。

 パリでオリンピックが開催されるのは1924年以来100年振りで、パラリンピックの開催は初めて。パリ協定やSDGsの目標達成を踏まえて、大会を契機に持続可能な都市にアップデートする試みは、開催都市の新たなモデルになりそうだ。

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