コロナ禍で最も視聴者と繋がったテレビ局・琉球放送
【コロナ禍のなか、琉球放送が行った県民に寄り添うユニークな活動。】
飯島將太(RBC報道制作局ディレクター)
少し挑戦的なタイトルで、沖縄の放送局が何を根拠に言っているのだろうと、疑問を持った人も多いと思います。例えば、「コロナ禍で最も支持されたテレビ局は?」と聞かれたら、視聴率が高い報道番組を答えるかもしれません。「最も信頼されたメディアは?」と聞かれたら、グーグルやヤフーで最も検索された放送局や新聞社と答えるかもしれません。では、タイトルにある“最も視聴者と繋がったテレビ局は?”と聞かれたら、少し傲慢に映るかもしれないが、私は「琉球放送です」と答えます。それは琉球放送がこの1年間取り組んできた視聴者との繋がりを見ていただければ、少しは納得していただけるのではないでしょうか。
視聴者と繋がる企画が生まれたのは全国で初めて非常事態宣言が発令された4月7日でした。当時の沖縄の状況は、新規感染者数が一日に二桁出れば大騒ぎするような状態で、未知のウイルスに対する恐怖や全国的な自粛ムードで、沖縄も生きるのに息苦しさを感じるようになっていた頃でした。
そんな中、少しでも県民に元気になってほしいという願いを込めて始まった企画が「#新型コロナに負けない!」キャンペーンです。そのキャンペーンの運営やCM制作を担ったのが私で、普段は報道担当のディレクターとして日々のニュースや、特番のディレクターの業務を担っています。その業務の合間にこのキャンペーンを動かすことになりました。(まさかこのときは、1年通じて、通常業務の合間にあんなに大量のCMを作ることになるとは夢にも思っていなかったのですが・・・・)
「#新型コロナに負けない!」キャンペーンに想定を超える反響
「#新型コロナに負けない!」キャンペーンは、視聴者投稿型のCMキャンペーンで、保育園生から小学校低学年くらいまでの手洗いをする様子や、おうちじかんの過ごし方などを募集しました。
CMの狙いは〝啓蒙〟ではなく〝癒し〟です。ニュースや政府広報CMなどで、注意喚起されることが日常となり、県民も注意喚起疲れを起こしている気がしました。CM放送が始まると、子どもたちの可愛らしい姿に「癒される」「かわいい」など視聴者から多くの反響が寄せられ、日に日に投稿数が増えてきました。
最終的には1日50件の投稿が寄せられ、想定を超える応募状況に予定を早めて募集を締め切り、約1カ月半で1300件を超える動画や写真が寄せられました。募集は締め切ったものの、CMの放送は続け、第2波のタイミングで動画の募集を再開しました。キャンペーンはことし2月末まで続き、11か月間で延べ1804件の応募がありました。作成したCMも89本に上ります。あまりにも大きな反響だったため、「#新型コロナに負けない」を冠にした企業型CMも営業主導でセールスされ、約10社の協賛を集めました。これが琉球放送で行われた新型コロナに関するキャンペーンの第1弾です。
新型コロナに負けない動画/YouTube
https://www.youtube.com/playlist?list=PL-qA2faP0WVqPOdLc4FyqEk4wd4hpNp_j
「全力部活」が大きな感動を呼ぶ
第2弾は、夏の全国大会が軒並み中止となってしまった中学・高校の部活生を応援する企画「全力部活」です。思い出が作れない部活生のために企画され、第1弾と同様に視聴者からの動画を基にCMを放送し、子どもたちの頑張った証をCMで表現しました。夕方ニュースとも連動し、週1回の「全力部活」コーナー化、さらに1時間の特番を実施しました。「全力部活」では55校106部活を紹介し、そのCMはテレビ放送だけでなくユーチューブやツイッターなどのメディアにも投稿し、合わせて15万再生を獲得しました。
一方、沖縄県では沖縄県高校総体として、県独自の大会として実施されました。しかし、感染対策のため屋内競技のほとんどが無観客試合で行われ、保護者も観戦することは叶いませんでした。そんな時、県高体連から琉球放送に屋内競技をWEB配信してほしいと依頼があり、その結果、14競技240試合以上を特設サイトで配信し、延べ10万人が視聴しました。
この企画を通し『子供たちが頑張ってる姿っていいですよね。全力部活を観てると涙がでてきます。みんな頑張れ!』 『とても感動しました。毎年この企画、放送してほしいです』と、部活生たちの一生懸命な姿が多くの感動を呼ぶこととなりました。
全力部活動画/YouTube
https://www.youtube.com/user/rbctvpr/playlists?view=50&sort=dd&shelf_id=4
卒業生のための「#みんなの卒アル」
そして、最後を飾る第3弾がコロナ禍で様々な行事が無くなり思い出が多く作れなかった卒業生を応援する「#みんなの卒アル」キャンペーンです。これまでと同様に卒業生から動画や集合写真を投稿してもらい、CMを制作。そして今回は、この企画の趣旨に賛同した沖縄出身のロックバンド〝かりゆし58〟の卒業ソング「さよなら」をキャンペーンソングとして使用しました。
この企画ではCMのほかに、投稿された写真を使って、卒業アルバムも制作し、投稿した視聴者にデータを渡す予定です。このキャンペーンは3月31日まで続き、これまでに120グループを超える投稿が寄せられています。(3月22日時点)
#みんなの卒アル特設サイトhttps://www.rbc.co.jp/news_rbc/minnano_sotsual2021/
琉球放送はこれからも・・・
琉球放送では1年間、新型コロナに苦しい、悔しい思いをした視聴者に寄り添ってキャンペーンを行ってきました。小さい子どもたちの笑顔で県民に癒しを与えた「#新型コロナに負けない」、部活生を応援した「全力部活」、卒業生に最後の思い出作りとしての「#みんなの卒アル」、この1年間に制作したCM本数は213本です。
1年間で視聴者投稿型CMをこれだけ制作した放送局は琉球放送だけではないかと思います。決して制作した数を自慢したいのではありません。新型コロナという未曽有の危機に対して、嫌なことも苦しいこともあったと思いますが、それでも県民は前を向き、未来ある子どもたちのために何かを残したい、その思いが投稿の数、CMの数に表れているのではないかと思ってます。新型コロナが無くなった世界で、もっと明るい子どもたちの笑顔を見れることを願って、琉球放送はもう少し視聴者と繋がったキャンペーン活動を続けていきます。
<執筆者略歴>
飯島將太(いいじま・しょうた)
1985年生。東京都出身。
2008年琉球放送入社。本社営業、東京支社などに勤務。
2016年4月から報道制作局ディレクターとなり、
バスケットボール、サッカー、ゴルフ、マラソンなどのスポーツ中継から
報道系の特別番組やニュースのレポートなど多岐にわたり担当。