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<シリーズ SDGsの実践者たち> 第26回 ヨーロッパで加速する「脱プラ」の現状

【日本にあふれている使い捨てのプラスチック製品は、ヨーロッパの国々では見なくなりつつある。加速する「脱プラ」の現状は。】

「調査情報デジタル」編集部

フランスのカフェやスーパーに見る「脱プラ」

 これは世界80か国以上に展開するコーヒーチェーン、スターバックスがフランス国内で使用しているカップ。蓋の部分を見ると、紙の素材でできている。日本など他の国で使われているプラスチック製の蓋は存在しない。

紙の蓋

 一方、こちらは大手ファーストフードチェーンのマクドナルドが、フランス国内で使っている飲み物の容器。

フランスのマクドナルド

 やはり、蓋は紙のような素材で作られている。フランスでプラスチック製の容器が見当たらないのは、2020年からプラスチック製の使い捨て容器や食器を禁止する法律が施行されたからだ。

 プラスチックの使用を禁じる規制は、様々な分野で打ち出されている。2022年1月からは、小売り業者に対して、野菜や果物のプラスチック包装が禁止された。パリのスーパーマーケットでは、野菜と果物はどこも量り売りで販売されている。

 スーパーの量り売り

EUで使い捨てプラ製品の流通禁止、各国独自の取り組みも

 2023年版SDGs達成度ランキングで日本は21位だった。上位20か国はすべてヨーロッパの国々だ。SDGsには17目標があるが、目標12「つくる責任 つかう責任」などの取り組みがヨーロッパでは進んでいる。

 その理由は、現在27か国が加盟する欧州連合(EU)が、プラスチックごみをはじめとする環境問題に積極的に取り組んでいるからだ。

 EUでは2019年5月に、使い捨てプラスチック製品の流通を2021年までに禁止する法案が可決された。フォークやナイフなどのカトラリーのほか、皿、ストロー、コップなどが対象になっていて、加盟各国ではすでにプラスチックから代替品に置き換わっている。同時に、プラスチック製のボトルの回収率やリサイクル率についても高い目標を掲げた。

 EUの規制をベースにしながら、各国独自の取り組みも進められている。その中で脱プラスチックを先駆的に進めているのがフランスだ。

 フランスでは前述した規制のほかにも、2025年末までに使い捨てプラスチック包装の年間市場投入量を2018年比で20%削減することを目標にしている。あわせて、削減量のうち50%以上は繰り返し使用するリユースと、原材料やエネルギー源として利用するリサイクルによって達成することも定めた。また、2025年1月までに使い捨てプラスチック包装のリサイクルを100%にするなど、次々と具体的な目標を掲げている。

 一方、EUを2020年1月に離脱したイギリスも、脱プラについては意欲的だ。2020年4月からプラスチックのストローやマドラーなどを全面的に禁止。直近では2023年10月から、プラスチック製の使い捨て容器やフォーク、スプーンなどを禁止した。

ロンドンのオフィス街のランチ風景

 ロンドン市内のオフィス街では、テイクアウトのランチを楽しんでいる人々の姿が見られる。この写真は2023年9月上旬に撮影したもので、食べ物の容器には、まだ蓋など一部にプラスチック製品が使われていた。現状よりコストのかかる容器を使うことに慎重な事業者もいたが、10月以降はプラスチック製の容器は禁止された。

 このように、ヨーロッパの各国では、ここにきて法規制による脱プラが加速している。事業者を法で規制することを、消費者の側が理解しているからこそ、次々と新たな政策が打ち出され、実行されている面もあるだろう。

量り売りされているロンドンの市場

「プラごみ大国」日本の政策は

 ヨーロッパから日本を訪れた人は、「あれも、これも、プラスチックばかり」と驚く。実は、日本は「プラスチックごみ大国」であることが指摘されている。

 国連環境計画が2018年に発表した報告書によると、人口一人あたりのプラスチック包装容器の廃棄量が、アメリカに次いで世界で2番目に多い。また、2017年には日本のプラスチック生産量が世界第3位であることも、別の調査で指摘された。

 各国で廃棄物の輸入規制が強化されていることを受けて、日本でもプラスチックごみ問題への取り組みは進められている。生活に身近な政策は、2020年7月からのレジ袋有料化だろう。大きな政策では、プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律、いわゆるプラ新法が2022年4月1日に施行された。

 プラ新法などによって進めているのは、ヨーロッパの国々のように製品の使用を禁止する法規制ではなく、プラスチックの資源循環だ。廃棄物を減らすリデュースと、リユース、リサイクル、それにバイオマスプラスチックなどへの素材代替に取り組む「Renewable」を基本戦略にしている。

環境省

 しかし、SDGsの折り返し地点である2023年の状況を見た時、日本の脱プラは進んでいるとは言えない。達成度ランキングでも目標12「つくる責任 つかう責任」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標14「海の豊かさを守ろう」といった、廃プラスチックが原因の海洋プラスチック問題や二酸化炭素の排出に関する項目について、最低の評価を受けている。

 もっと言えば、資源循環を目指すプラ新法などの取り組みが、日常生活の中で「プラスチックを減らそう」と考えることにつながっているのか疑問だ。ヨーロッパのような法規制がすべてではないものの、各国の取り組みを参考にしながら何ができるのかを考えることは、もっと必要ではないだろうか。

量り売りするヴェネツィアの水上マーケット

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