視聴者の声~ワクチン情報への関心の高さ
【ワクチンに対する不安の声がテレビ局にも押し寄せる。長引くコロナ禍が視聴者にもたらしているものは】
鈴木宏友(TBSテレビ視聴者サービス部)
新型コロナのワクチン接種に関するご意見
「朝から300回以上かけても繋がりません。これでは予約できません。かかったところで受付終了になってしまいそうです。是非このことを取り上げてください」70代女性
ワクチンの接種に関して寄せられる意見は切実なものが多い。政府のコロナ対応への不満をテレビ局に言ったところで仕方がないとわかったうえで、それでも受け皿がないから意見を寄せる、そんな苛立ちが垣間見える。
「高齢者へのワクチン接種が進んでいるかのように報道されていますが、医療従事者よりも高齢者が優先されているのが現状です。ワクチンの争奪戦が始まっています」50代男性
「日本のワクチン接種状況は国の失策。日本のワクチン戦略の是非をもっと真面目に検証して欲しい。先進国どころか途上国以下」40代男性
ワクチンの情報は関心が高い。番組もワクチン関連の話題は反応が良いそうだ。テレビをつければワクチンの話、となれば当然同じような映像が繰り返し放送され注射器もよく映る。
「画面いっぱいに、注射針が痛そうに腕に刺さる様子が何度も何度も流され、不快な気持ちになります。注射針が腕に刺さる様子は視聴者に恐怖を与えていることは少なからずあると思います」30代女性
注射の打ち方も含めて多種多様な意見が寄せられる。
「はい、TBSでございます。視聴者の方ですか?」
TBS視聴者センターは5月現在、緊急事態宣言を受け電話による視聴者対応を休止しています。40人いるオペレーターの安全を確保し視聴者センターの運営を最低限維持し続けるためです。幸い今のところコロナの感染者は出ていません。
「この電話は業務専用の番号です。番組に対するご意見はメールでお寄せください」
視聴者対応の電話を休止しているとTBSの大代表の番号に視聴者意見の電話が紛れ込むことがある。これまでは「緊急事態で視聴者対応を休止している」と説明すると割とすんなり理解が得られた。しかし3回目ともなると「意見を聞くべきだ」と電話を切ろうとしない人が増えていると代表電話の担当者がぼやく。
こんなところにも度重なる緊急事態宣言の影響が見て取れる。「人流」を止めることに力点が置かれた緊急事態宣言だが人出は余り減っていない。
「人の流れをわざわざ「人流」と表現しているがとても不快なのでやめてほしい」50代男性
コロナがらみで政府が無造作に使う「人流(じんりゅう)」にTBSがチームを組む九州の局の報道幹部もSNS上で鋭く反応した。「自分がデスクならこんな言葉は使わせない」と。
もとはIT系のビッグデータ関連の言葉だとの説がある。人をデータと見て疾病対策を行う合理性は理解できる。しかし、政治が市民社会に呼びかけ協力を求めるときにテレビ報道がそのまま「人流」とこの言葉を使用することが適切なのかはしっかり考える必要がある。
「わたしの辞書にジンリュウという言葉はない。何か冷たいというかお役所言葉に聞こえる」50代女性
人の流れが一向に減らないのは、政府が外出を控えるように呼び掛けた相手が「人流」と一括りにされた顔のない人々だったからなのかもしれない。政治は言葉とよく言ったものだ。
<執筆者略歴>
鈴木宏友(すずき・ひろとも)
1963年生。1987年筑波大学卒
同年東京放送入社。社会部、経済部記者、ニュース23チーフプロデユーサー
デジタル編集部長を経て視聴者サービス部長
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