視聴者の声~少子化、マスク、ジェンダー
村田典子(TBSテレビ視聴者サービス部)
年が明け、急に山が動いた。長年問題視されていたものの中々具体的な対策がとられてこなかった「少子化対策」だ。政府からは春に向けて「異次元の少子化対策」を検討するため、様々なことを議論していくと発表された。一方、この政府の発表の数時間前に、東京都からも都独自の少子化対策として18歳以下の子ども一人につき月5000円を給付するという案が突然ニュースとなり、反響を呼んだ。
視聴者の関心も高く、様々なご意見をいただいた。
「少子化対策にはお金をバラまくことよりも、子育て環境を整えるなど、他に考えるべきことがあるのではないのか」「今の若い人は、親世代や年配者の、苦労や貧困状態を身近に見ているので、結婚や子を持つ将来に夢が持てないのではないのか」
確かに、一生懸命子育てしながら働いても給料は横ばい、やっと定年を迎えても年金の目減り感は著しく、高年齢まで働き続けることを余儀なくされる現代。政治が頼りになるのかわからない、結局はお金がすべてなのか?そんな言葉が聞こえてくる
結婚や子育てをしたくないわけではないが、お金もかかるし自分にはできそうもない・・・。若い人が将来に不安を感じ、子どもを持つことを躊躇う気持ちもよくわかる。子どもを持ちたい、子どもを育てたいという人々がお金や環境の心配をせず生きていける世の中が来るのはいつになるのか。
さらに「晩婚化が大きな問題だと思う」「結婚に価値を感じない未婚者が増えているため、出生率が下がっているのではないか」といったご意見もいただいた。少子化の原因は多面的で複雑だ。だからこそ、視聴者の声をよく聞き、現状を肌で感じ、問題点をあらわにし、解決策を探る・・・それを積み重ねていくのもまた、我々マスコミに携わる者の仕事であろう。
コロナ禍も4年目に突入するなか、マスクに関してのご意見も様々だ。1月中旬には「マスクを外すことが取りあげられていますが、持病を持っている人だけが自分で防御しろというのは冷たい気がします」という声や、「料理人など食べ物を作る人にはマスクをしていてもらいたいです」というご意見、コロナで亡くなる方が増えた地域では、特に、マスクをはずすことが気になる、という内容もあった。ご意見からは、マスクを外すことに抵抗感のある方はまだまだ多いと感じる。
そんななか、政府より、5月8日からコロナが季節性インフルエンザと同等の5類相当に分類され、マスク着用に関しては個人の判断に委ねる(いまのところ)という発表があった。新たな分断をひきおこしそうな気配もある、個人判断のマスク着用。今後のご意見もしっかり注視していきたい。
あわせて「コロナワクチンが重篤化防止にどのくらい効果があるのか、コロナの薬は効いているのか、具体的な調査結果が知りたい」という内容のご意見も少なくない。視聴者が我々の報道に期待をかけてくれているうちに、応えていきたい。
毎月のようによくいただくご意見の一つに、ジェンダーに関するものがある。今回はアメフト関連の話題で「今の時代、チアガールではなくて、チアリーダーを使うべきでは?」というご意見をいただいた。米国ではチアガールとは言わないし、男性のアクロバティックなチアをご覧になった方もいるだろう。そもそもチアは男性から始まったともいわれている。アメリカの国民行事ともいわれるアメフトのNFLでも今や性別に関係なくチアリーダーが活躍する。日本でも男性チアリーダーは活躍しているが、まだ少ない。チアガールという言葉が固定観念を作ってしまうとしたら、それは避けたいと思う。
もう一つ、よく届くご意見としてこんなものもある。「お父さんも育児に“協力”とか“参加”という言い方はおかしいのではないでしょうか?我が家の場合はこうしてます、という分担があってもいいとは思いますが、育児や子育ては、お父さんもお母さんもどちらも親として当事者意識をもって当たり前にすることだと思います」という内容だ。
この「お父さんも育児に協力」や「育児を手伝う」という言い回しは、ニュースやバラエティ番組の家族を扱ったドキュメンタリーの中などでテレビ創世期から使われてきた常套句だ。あれからテレビの形態は白黒からカラーテレビになり、今やタブレットやスマートフォンでテレビコンテンツを楽しむ時代にまで進化したのに、テレビの中の「家族観」は世の中の流れより遅れているように感じることがある。
お宅ではどうだろうか?妻に「育児に“協力してる”ってどういう意味で言ってるの?」と言われビクっとした経験のある方もいるのではないだろうか。思わず出てしまった言葉かもしれないが、無意識だからこそ問題は根深いとも言える。たったひとつの言葉かもしれないが、こういった身近なことを是正していくことが案外、普遍的な少子化対策につながっていくのかもしれない。
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