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視聴者の声~幕を下ろす番組への思い

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【3月でいったん幕を下ろす番組に、様々な惜別のメッセージが】

菊 薫子(TBSテレビ カスタマーサクセス部)

 このまえ年が明けたと思ったらあっという間に4月、新年度が始まりました。

 先日、年度末3月のある日のこと、視聴者センターの業務終了間際でした。ポンポンと視聴者からご意見が連続で届きはじめました。この時間帯に珍しい着信数の増え方です。開いてみると「アイ・アム・冒険少年」に関するご意見でした。1時間も経たないうちに10件、20件と増えていきます。

 その日はメディアへの新年度改編説明会がありました。そこで発表となった「アイ・アム・冒険少年」レギュラー放送終了とともに、その席での発言がネット記事に掲載されたのです。

 「視聴者の皆様の声を大事にしてその期待に応えていきたいと思いますが、特番については現状決まっていることはありません」

 <視聴者の皆様の声を大事にしてその期待に応えていきたい>

 この一言がファンを動かしたようです。

「レギュラー放送の終了を耳にし、とても寂しく思っています。私は、めめこじ(Snow Man・目⿊蓮さん、向井康二さん)の出演がきっかけで見るようになったのですが、今では番組自体が大好きです。安心してチャンネルを合わせられる貴重な番組として大切にしている親御さんは多いですし、私も将来子どもができたら『冒険少年』みたいな番組を見てほしいと思っています。番組の継続、特番などでの復活を祈っております(女性20代)」

「笑いだけでなく、ためになるサバイバルの知識も豊富にあって、子どもたちも楽しめる番組だと思います。自然災害が多発している今、楽しみながら学べる番組は貴重です。特番でもいいので、どうか番組を残してください。冒険少年ファミリーが全員そろったところをまた見たいです。どうか視聴者の気持ちをくみ取ってください(女性40代)」

 今や飛ぶ鳥を落とす勢いのSnow Manメンバーの出演番組、ファンの方々からの切なる要望がなんと700件も寄せられました。アイドルの推し活をする方々の熱量には毎度感服です!

 2023年度での放送終了が惜しまれた番組と言えば「世界ふしぎ発見!」もその一つです。
  
 1986年4月にスタートしたこの番組は実に38年の長寿番組でした。番組のファンにとっては人生の長い時間をともにすごしたコンテンツと言えるのでしょう。

「すごく楽しい番組でした。親の時代から見ていました。やめてほしくないです。残念です(女性40代)」

「『兼高かおる世界の旅』や『世界ふしぎ発見!』など、TBSで海外情報を知り興味を持つことができました(女性60代)」

「いつも番組を親子で楽しみにしている50代の会社員です。放送中、子どもにメモを取らせながら見させていました。翌日、ノートにレポートをまとめて夕食時に家族に発表してもらうのが我が家のルーティンでした。また放送がある日を待っています。ありがとうございました(男性50代)」

 名残を惜しむファンから「不定期でもいいので特番で続けてほしい」などの要望が届いています。

 このように視聴者センターには番組(コンテンツ)に対する様々な感想のみならず、『要望』も多数寄せられます。

 最近はSDGsの概念が浸透し多様性が謳われるようになったからか、障がいのある方からのご要望もいただけるようになってきました。

 以前このコラムでも視覚障がいのある視聴者を中心に「解説放送をつけてほしい」という声があることをご紹介しましたが、最近特に数で目立っているのは「音」に対する指摘・要望です。

「私は軽い聴覚障がいがあります。母は高齢で補聴器をつけています。パネラーの方の話をしっかり聞きたいのにBGMの音量が大きくて聞き取れません。テレビの音量を上げるとBGMも大きくなります。耳が悪い人にはBGMは雑音です(女性50代)」

 高齢者の方からも同様のご意見が多いです。番組制作者にとっては意図があっての音の演出なのですが、一方でそのせいで聴こえづらくなっている視聴者がいる。この現状について、ご意見をまとめ現場に共有し検討をお願いしました。

「BGMについて。番組の解説中に流れるBGMが今日は途中から流れなくなったので驚きました。先日、要望したのが聞き入れられたのでしょうか。これで集中して解説が聞けます。ありがとうございました(男性70歳以上)」

 演出上必要なBGM、視聴を妨げないBGM、番組制作サイドはその落としどころを試行錯誤している段階です。

 障がいのある方からの指摘として、「色合い」についてもご意見が来ます。

 まずはスポーツ中継番組に届いた指摘。

「地上波で野球の中継をする際に、ストライク・アウトの表示の後ろにグレーの色がかかっているのですが、私は色覚障がいなので識別ができず、ストライク・アウト・ボールがわかりません。もっと色覚障がい者のことを考えてください(男性70歳以上)」

 そして次に情報番組のフリップの色使いについての指摘。

「花粉飛散予報の色分けについて。花粉飛散予報の段階別色分けが“最も少ない”が水色で“最も多い”が薄紫色になっていますが、1型2色覚者には全く判別できません。ご検討ください(男性70歳以上)」

 「色合い」についてのご意見は「音」に比べると数は多くないのですが、非常に重要な視点ととらえ、その都度現場と共有してきました。送り出しているつもりの情報が、色の組み合わせによって受け取れなくなっている視聴者がいるのですから。

 【多様な色覚に配慮して、情報がなるべくすべての人に正確に伝わるように、利用者の視点に立ってデザインすること】。“カラーユニバーサルデザイン”の考え方です。

 TBSグループでは2月に「人権ウィーク」を開催しました。差別やいじめなど「人権」について学ぶ機会を設けたのですが、この期間中“カラーユニバーサルデザイン”についても講演会を通して知見を深めました。

 色覚障がいは男性で20人に1人、女性では500人に1人にあると言われています。

 「音」に関して言うなら、ご高齢の方の多くが聴きづらさを感じているかもしれません。

 “カラーユニバーサルデザイン”の考え方は色合いの問題だけにとどまらず、『情報がなるべくすべての人に正確に伝わるようなコンテンツ作り』と拡大解釈できるのではないでしょうか。

 視聴者センターから現場へのご意見の共有、そして今回のような「人権ウィーク」という取り組みを通じて、現場の意識が変わってきていることを実感しています。

 視聴者の声が気づきのきっかけになることは多いです。それが全社的な学びに繋がります。

 そんな責務を感じながら、視聴者センターは日々ご意見を拝聴しています。

<執筆者略歴>
菊 薫子(きく・かおるこ)
1967年生、1990年TBS入社
スポーツ局でスポーツ中継番組制作、宣伝部デジタル宣伝グループ、事業部では美術展覧会制作を経て現在カスタマーサクセス部長

この記事に関するご意見等は下記にお寄せ下さい。
chousa@tbs-mri.co.jp

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