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「ひるおび!」はコロナ禍とどう向き合ってきたか

【日々大量の情報を迅速正確に届けねばならない情報番組。一方で大人数の出演者、スタッフの感染も防がねばならない。現在も続く彼らのたたかいの状況】

 松添美徳(TBSテレビ情報制作局情報三部長)

新型コロナの「登場」

「中国の新型ウイルスによる感染者が出た!」昨年1月15日に初めて新型コロナウイルスの国内感染者が確認され、翌日「ひるおび!」では初めて本格的にこの“未知のウイルス(当時)”について取り上げました。この時、よもやその後1年以上にわたって「新型コロナウイルス」に関する放送が続くことになるとは、当時誰一人として思いも寄りませんでした。その後「クルーズ船での集団感染」「WHOによるパンデミック宣言」と急速に事態は拡大し、国内でも感染者増加の中ついに4月、最初の緊急事態宣言発出を迎えることになります。

【引き続き「迫られた『感染予防策』」に続く】

迫られた「感染予防策」

 この間、徐々に放送を続ける自分たちの身の回りにも、忍び寄る新型コロナの影が日を追うごとにリアルなものとなり情報番組として「放送を継続する」ための様々な施策に迫られる事態になりました。まず2月27日からは、一般客によるスタジオ観覧を無期限で中止(5月6日現在も継続中)。3月末からはスタジオの出演者たちもソーシャルディスタンスをとり、十分な距離が取れない出演者の間には飛沫防止用アクリルボードを設置、スタッフについてはスタジオでは勿論スタッフルームでもマスク着用を義務付けました。

5③画像②打合せ風景

 またMCの恵さん、八代さん、江藤アナウンサーとの放送前の打ち合わせもスタッフルームを避け広いリハーサル室に変更、出演者の机は大きなアクリルボードで囲いました。参加人数も減らし打ち合わせの様子はリモートでスタッフルームに伝わるような仕組みをとりました。スタジオに関しては、限られた専門家以外のコメンテーターは別室やご自宅からのリモート参加とし、一時八代さんも別スタジオからのリモート参加としました。
 ちなみに八代さんはこのリモート参加が続く中で、目線の送り方などに気を配りリモートでありながら、あたかもリアルにスタジオにいるかのような雰囲気を醸し出すテクニックを習得され、ネット上でも「八代弁護士のリモートテクニックは情報番組でピカイチ!」という書き込みがなされるほどになりました(笑)。

5③画像③八代弁護士

新たに生まれたもの

 コロナ禍を機に各番組が取り入れたこの“リモート出演”というスタイルは思わぬ副産物も生み出しました。通常スタジオ出演をお願いする場合、地方にお住まいの方であればスタジオの有る東京まで出かけなければならずスケジュールの都合で出演がNGというケースも少なくありませんでした。
 しかしリモートの場合はソフトをPCにインストールしさえすれば自宅からでもお一人でテレビ電話を使ってスタジオに参加できます。その簡便さもあってか京大iPS細胞研究所の山中伸弥教授や「バカの壁」の著者である養老孟司さんといった通常であればスタジオ出演が稀な著名人の方々にもご出演頂きました。当然画質や音質の低下やディレイ(画像、音声等の遅れ)が生じてしまうなどのデメリットもありますが、このリモート形式は情報番組のみならず、新たなテレビ番組の可能性を気付かせてくれた側面もありました。

5③画像④山中教授リモート

 生放送以外で最も気を遣ったのは「スタッフから感染者を出さない」ということでした。コロナ禍では出社を控えるリモートワークが社内でも推奨され普及しましたが、生放送の情報番組制作はすべてリモートワークというワケにはいきません。決して広くはないスタッフルームに数十人のスタッフが作業する過密な状況の中、感染拡大は最悪放送中止に繋がりかねません。
 個々人の毎朝の検温は勿論、体調に変化があれば即退社、さらに担当曜日のスタンバイとOA以外は可能な限りリモートワークの日を設ける等、なるべく人口密度を下げながら一定のクオリティを保った放送を継続するという毎日は精神的にもストレスのかかる日々でした。幸運にも現状番組内で感染者は発生していませんが、事態の長期化に伴い「緩み」も生まれがちな中、今後も感染予防には緊張感をもって取り組んでいかなければなりません。

伝えたいこと

 最後に番組内容に関してですが、「ひるおび!」はこの1年余り可能な限りこの「新型コロナ」と向き合ってきました。『変異株』『ワクチンの普及』そして『五輪開催』など今後も新型コロナを巡る様々なハードルは待ち受けています。そうした中でも「専門家の知見をもとに過剰に不安を煽り立てることなく冷静に正しい情報を伝える」MCの恵さんとも共有したこの姿勢を大切にして、これからも番組制作にあたっていきたいと思っています。

<執筆者略歴>
松添美徳(まつぞえ・よしのり)
1991年TBS入社。1993年 森本毅郎さん司会の情報番組「ウォッチャー!」でADを担当、以後、いくつかの情報番組でディレクターを担当。
2005年 恵俊彰さん司会の情報番組「きょう発プラス!」、続く
「2時っチャオ!」で曜日担当プロデューサーを務める。
2009年「ひるおび!」立ち上げに加わり、曜日担当プロデューサー。
2014年からは同番組の制作プロデューサーを務める。
2018年 情報三部長となり現在に至る。

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chousa@tbs-mri.co.jp

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